本研究課題は、公私協働組織のガバナンスについて、公法学(憲法学及び行政法学)の観点から検討を行うものである。 これまで、わが国においては、公私協働のあり方に関して組織法的な観点に基づくガバナンスの議論が十分に展開されてこなかった。このような問題意識に立脚して、本研究課題においては、公私協働組織(第三セクター、外郭団体等)のガバナンスに関連する日本とドイツの法理論および法制度の比較研究を行うとともに、両国の公私協働組織の実態を把握するための現地調査の実施を通じた現状分析的な視点も取り入れながら、公私協働組織のガバナンスに係る法理論の構築と法制度設計を企図して検討を行ってきた。 新型コロナウイルスの感染状況拡大の影響を受けて補助事業期間の延長を経た研究プロジェクトの最終年度である2022年度においては、本研究課題の遂行の中で公表してきた学術論文の成果、現地調査の結果等を踏まえ、本研究課題の全体的な取りまとめ作業を行った。その成果は単著の学術研究書『自治体事業と公私協働:組織法的観点に基づく公法学的研究』(日本評論社、2023年)として刊行されたが、同書においては、①事業法、②組織法、③自治体という三つの基本的な視座に立った上で、本研究課題を遂行する中で研究成果として随時公表してきた学術論文等の研究成果を総合し、最終的な結論として、a)ドイツ法の特徴(公法私法の二元的秩序を背景とした多層的かつ領域横断的な法枠組み、個別領域の特徴に応じた公私協働の形成)、b)わが国への示唆(行政組織法への示唆、事業の性質を踏まえた議論への示唆、法政策論への示唆)、c)今後の展望(組織法研究の視野拡張、公私協働に係る手法の組合せ、比較法的観点を含む各論研究)を示した。
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