研究課題/領域番号 |
19K13494
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中嶋 直木 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (20733992)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 安全規制 / 目的プログラム / 狭義の法律実施条例 |
研究実績の概要 |
2020年度では、やや基礎理論的問題を中心に研究を進めた。具体的には、法律の「目的プログラム」性という概念についてである。これは、(特にドイツにおける)近時の私人の参加論に関する研究においても、重要な理論的要素として紹介されている。この概念は、我が国においても紹介されて久しいが、参加論(とりわけ、本研究の対象たる絶対的手続権保障)との理論的関係やその概念自体の背景、内容・性格などについて、必ずしも明確ではない部分があった。そこで、改めてこの概念について整理・検討を行ったのが、2020年度である。 第1に、我が国における原発法制への周辺自治体の関与という問題を素材として、原発法制(とりわけ安全規制)は不可避的に「目的プログラム」性を有するということを確認し、それゆえに、原発法制には自治体も含む多様な主体の参加を要するという議論を整理・検討した。 第2に、法律の「目的プログラム」性と参加論の結合という上記の結論を前提としつつ、その理論的根拠を明らかにするために、ドイツ法理論の検討を行った。「目的プログラム」出自であるN・ルーマンの議論と、それをドイツ公法学がどのように受容してきたかに関して、資料収集と整理・検討を行った。もっとも、なお法律の「目的プログラム」性の議論と規範論としての民主的正統化の議論との関係や法律の「目的プログラム」性と絶対手続権保障との関係は不明確なままであるので、引き続き検討を進めてゆく。 第3に、「目的プログラム」的思考が、我が国の条例論の中にも存在していることを明らかにした。具体的には、近時有力に主張されている狭義の法律実施条例を支える思考が、従来の条例論と比較すると、「地方自治の本旨」を目的とした「目的プログラム」的であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も新型コロナウィルスの影響で、なおドイツにおける文献・情報収集ができていない。また、それに伴い本年度は基礎理論的な研究に終始したため、具体的な個々の法制度や事例における絶対的手続権保障の研究が十分に進められていない。以上より、当初の予定よりも「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では、2019年度の各論的研究と2020年度の総論的研究を結合させる予定であった。しかし、どちらもまだ不十分である。2021年度ではこれらを見直しつつ研究を進めてゆくが、研究期間延長も視野に入れる。 今年度の具体的な研究の推進としては、第1に、前半で2019年度に取り組んだ個別法制における絶対的手続権保障の研究を進め、成果をまとめてゆく。第2に、私人の参加論に関する新たな知見を、研究会を開催することでフォローアップし、本研究の総論的成果につなげたい。第3に、ドイツにおける情報・文献収集については、オンラインに切り替えるなどして進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に、旅費において次年度使用額が生じたのは、予定していたドイツでの文献・情報収集が新型コロナウィルスの影響で実施できなかったためである。また、物品費では、当初予定していた個別法制の各論的研究が基礎理論的な研究に計画を変えたため、当初予定していた数の書籍の購入がなされなかった。 なお新型コロナウィルスの影響が不透明なため、ドイツでの文献・情報収集を断念し、オンラインでのヒアリングや書籍購入に切り替えることで、予定されていた旅費を専門的知識の提供者に対する謝金や書籍購入費用に充てることも考えてゆく。
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