研究課題/領域番号 |
19K13494
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中嶋 直木 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (20733992)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民主的正統化 / 公衆による統制 / 社会科学における正統化 / 是正の指示 / 機関訴訟 / 連携中枢都市圏 |
研究実績の概要 |
2021年度もCOVID-19による影響でドイツ等での最新の知見や資料の収集ができなかった。その代替的成果として、北海道大学法学研究科助教の谷遼大氏を招き、ドイツにおける「個人」の「参加」論の過去・現在の理論的動向について、研究会(「熊本公法理論研究会」)を開催した。また、環境法学における参加の実践は「参加」論にとり必要不可欠であるため、環境法学における最先端の理論・実務状況に造詣が深い研究者も複数招いた。そこでは、活発な意見交換がなされ、ドイツにおける個人の参加論の理論的基礎と最新動向を確認することができた。 次に、派生的な研究成果としては、中嶋直木「地方自治法245条の7第1項に基づく許可処分をするよう求める是正の指示の適法性」新・判例解説Watch30号(2022年)41-44頁をあげることができる。沖縄県辺野古基地移設問題は、国の事業に対する自治体の広い意味での「参加」問題といえる。その一局面ではなるが、判例においてどのような考慮要素がどのように衡量されているかの分析を中心に検討した。その結果、実体的法的問題を主眼とする裁判所による救済はやはり地方自治の保障にとり限界があり、それゆえに手続的法的問題の重要性が確認され、本研究の意義が改めて確認された。 同じく、派生的な研究成果であるが、中嶋直木「続・自治体法務における『連携』」自治実務セミナー2022年1月号(2022年)32-36頁があげられる。これは、近時の自治体連携、公共私の連携について、熊本大学と熊本連携中枢都市圏等の連携を素材として検討するものであるが、構成自治体・住民の参加手続ついて問題提起を行った。これは、「連携」という今後の地方自治の動向に則した参加論の手掛かりとなるものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度においても、COVID-19による移動制限や資料収集・意見交換の困難により、十分な資料・知見を収集することができなかった。 そのため、2021年度に至っても、本研究の最終的な論文の完成に至っていない。そこで、2020年度に着手した基礎理論的研究(「目的プログラム」論)を中心とすることで、研究対象を縮小しつつ、成果をあげることを目指したい。そのため、最終年度を1年間延長してこれに取組むこととした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に予定していた、各論的研究と基礎理論的研究の統合から、後者に重点を置いた研究へとシフトする。というのも、COVID-19の影響により、どうしても最新事例等を収集する機会が制限されるためである。基礎理論的研究に集中することで、少なくとも本研究の基礎を固めることを目標としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、予定していた出張が中止となったため、研究計画を変更した影響で残額が生じた。2022年度は論文をまとめることを目的とするため、出張ではなく、その代替的方策に即して、古書も含め書籍等を購入する。また、遠隔調査を可能とするために、通信機器やデータベースの購入も検討する。
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