研究課題/領域番号 |
19K13498
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
泉 絢也 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (70816735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 暗号資産 / 仮想通貨 / キャピタルゲイン / 譲渡所得 / オーストリア / ハッキング / 損害賠償金 |
研究実績の概要 |
比較法研究として、オーストラリアにおけるキャピタルゲインに対する所得税の内容や沿革を検討した上で、暗号資産の課税関係及びその根拠について、比較的詳しく情報を公開しているオーストラリア国税庁の対応を検討した。これによって、我が国における暗号資産に対する税制を検討する際に有益な、①暗号資産はキャピタルゲインを生む資産ではないか又は譲渡所得の基因となる資産に該当しないかという点に関する議論、②ビットコインの権利性ないし私法上の性質等に関する議論、③暗号資産(及び/又は外貨)の譲渡に係るデミニミスルールに関する議論への示唆を得ることができた。また、オーストリア国税庁と比較して、我が国の国税庁が当初発信した暗号資産の課税関係に関する情報の内容が説明不足ないし検討不足であったことを指摘した(千葉商大論叢58巻2号所収)。 また、暗号資産のハッキング被害にあった暗号資産交換業者から金銭の補償を受けた場合を素材として、個人が受領する損害賠償金・補償金等に対する所得課税の取扱いを研究し、所得税法施行令94条1項という1つの条文に所得分類の決定と非課税所得からの除外という二面性をもたせることに問題があることを明らかにした(千葉商大紀要58巻2号所収)。 さらに、租税理論学会における報告内容をベースとして、暗号資産の私法上の性質や法律関係等の議論から得られる示唆を明らかにした。すなわち、暗号資産の私法上の性質に関する議論、とりわけ何らかの権利該当性に関する議論が租税法上の「資産」該当性の議論に与える影響、及び、金銭との類似性を重視する考え方(金銭=「所有=占有」理論)が租税法に与える影響を論じた(租税理論研究叢書30号『租税上の先端課題への挑戦』所収)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりオーストラリアの比較法研究を行うことができたことに加えて、我が国における所得税制の基本的な論点でもある損害賠償金の非課税規定に関する研究も行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で予定していた作業を引き続き進める。具体的には、OECD等が公表した各国の暗号資産税制に関する資料又はカナダの暗号資産税制の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響を考慮し、海外からの洋書の購入を差し控えていた。翌年度は洋書の購入を増やす予定である。
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