研究課題/領域番号 |
19K13499
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
高田 実宗 駒澤大学, 法学部, 講師 (50805794)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計画行政法 / 道路交通法 / 道路法 / 環境法 / 都市法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、次世代が求める交通システムについて、計画法の観点から、それを支える統合的な法的基盤の構築を試みることであった。すなわち、現代社会が求める交通政策には、さまざまな要請が反映されるため、それを支える法領域が多岐にわたっており、かつ、それら各法領域は独自の法理論を発展させてきた。そして、そのような諸法令に基づく権限は、複数の主体に分担されている。そうした複雑な利害状況の下にある交通政策について、どのように、各法領域および諸権限の調整を横断的に図っていくのか、そして、その全体的な合理性を如何に担保するのか、このような学術的な問題意識を出発点として、わが国の行政法が手本としたドイツ法との比較法研究を行っているところである。 2019年度においては、上記の研究目的を踏まえ、環境管理計画に基づく交通規制に着目した法的分析を行った。すなわち、EU環境法の要請を受けて、ドイツでは、大気汚染の改善が急務となっており、連邦行政裁判所は、2018年2月の判決において、連邦法令の根拠が欠けるなか、排出基準(Euro6)を満たさない旧式のディーゼル車に対する走行規制を容認した。さらに、欧州司法裁判所は、2019年12月の先決裁定において、判決に沿った環境管理計画の変更を拒み続ける策定官庁に対し、その強制執行の手段として、任務担当者を強制拘禁する法的可能性まで認めるに至った。本年度は、こうした昨今の欧州における情勢を素材としながら、計画法が舞台となった法治国家と権力分立の緊張関係を描写することに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画によれば、2019年度は、ドイツに渡った資料収集を通じ、研究材料となる最新情勢の把握を努めるとともに、環境管理計画が定める交通規制を素材とした論考の執筆をすることとなっており、そうした計画は着実に達成できたと考えられる。 ドイツへ渡っての文献調査は、2019年8月に実施し、デュッセルドルフ大学法学部図書館およびミュンスター大学法学部図書館を訪れ、ドイツの交通法制をめぐる最新資料を渉猟することが叶っている。こうしたドイツに足を運んで得た知見を踏まえ、論文の執筆に着手していたところ、2019年9月にEU法研究会での報告機会を得ることができたため、「EU法とドイツ交通法制の展開」と題する報告を行った。その際に、他の研究会参加者との活発な議論が交わされ、そうした意見交換を通じ、大変有意義な示唆を得ることができた。そして、以上のような研究活動から得た成果を公表すべく、論考の執筆に励んだ。 その結果として、本年度においては、2018年2月の連邦行政裁判所判決を素材とした「ドイツのディーゼル走行規制とEU法」および2019年12月に下った欧州司法裁判所の先決裁定を素材とした「環境管理計画と行政に対する強制執行」と題する小論2本を大学紀要『駒澤法学』(19巻1号・19巻3号)に公刊した。このように、環境管理計画に基づく交通規制を素材とした論考の公表に漕ぎ付くことができており、本研究は、全般的に、おおむね順調に進展していると評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も、ドイツへ渡っての調査活動を目玉に、最新動向の把握を継続しつつ、ヨリ分析対象の幅を広げた研究活動に取り組んでいきたい。ただし、今般の新型コロナウイルスの感染拡大に鑑み、ドイツへの渡航を断念せざるを得ない事態が予想されなくはない。そうした場合には、本研究の進捗に支障を来すものの、その遅れを最小限に抑えつつ、わが国でも入手可能な資料に頼り、研究活動を遂行する。 今後は、交通政策を支える各法領域の射程および限界について、ドイツの判例および学説を丹念に紐解きながら、わが国の交通法制と整合させつつ、その体系的な整理を図っていく予定である。なお、2019年度に実施した資料収集活動の成果を踏まえると、道路財源を裏付ける法的可能性や交通計画における自治体の役割といった話題へと視座を移すことになろう。引き続き、こうした研究成果を外部の学術雑誌や大学紀要等へと公表していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した外国書籍の出版が遅れたため、次年度の使用額が生じた。次年度において、当該書籍の購入費に充当する計画である。
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