研究課題/領域番号 |
19K13501
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小林 祐紀 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (40761458)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公法学 / 憲法 / 立法裁量 / 準手続審査 / 憲法訴訟 |
研究実績の概要 |
立法裁量統制としての準手続審査の理論的・実践的応用可能性を探究するという本研究の目的に照らし、当該審査手法の適用条件を実際に画定すべく、より積極的に同審査手法が適用され、事例も数多く存在する欧州に焦点を当てて研究を進める必要性があることを研究計画書において示した。それは、アメリカの判例・理論の中から、①準手続審査の現状分析、②準手続審査の理論的正当化という点について従来より研究を進め、一定の研究成果は得られたものの、適用条件の画定においては関連する判例・理論が量的に不足している点があったことが要因として挙げられるからである。そのことを踏まえ、本研究の初年度にあたる2019年度は、欧州司法裁判所や欧州人権裁判所の裁判例において展開される、準手続審査の適用領域やその適用条件を把握するために、各裁判所の判例や文献を収集するとともに、それらを分析・検討するなどの研究を進めてきた。研究を進めるなかで準手続審査をより積極的に適用していることについては把握することができた。しかし他方で、その背景や理論的根拠については、複数の国が関係する国際的な司法機関であることもあり、十分に見出すことができなかった。また、COVID-19の世界的大流行の影響により、当初予定した海外出張による専門家へのインタビューや関連資料の収集が実現できなかったことも研究実績に大きく影響を与えており、上記課題についてさらなる調査・分析が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の初年度にあたる2019年度の研究については、研究実績の概要にも記載したように、研究計画書に沿った形で概ね進められたが、COVID-19の世界的大流行の影響により、当初予定した海外出張による専門家へのインタビューや関連資料の収集が実現できなかったこともあり、欧州司法裁判所や欧州人権裁判所の裁判例において準手続審査が適用されてきた背景や理論的根拠については十分に見出すことができなかった。その点については、次年度も引き続き研究を進める必要があるため、当初の研究計画に照らしてやや遅れていると評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の次年度にあたる2020年度については、前年度の研究課題を継続して進めるとともに、当初計画していた内容についても研究を進める予定である。具体的には、ドイツの連邦憲法裁判所の裁判例に見られる準手続審査の分析を行い、ドイツにおける準手続審査の展開とその適用条件を明らかにしたいと考えている。ドイツの連邦憲法裁判所の判例においても、各機関の性質(憲法裁判所の存在)から若干の差異が認められるものの、従来の裁判所による敬譲審査から立法過程における手続的観点を実体審査に加味したうえで、立法裁量を実効的に統制しつつ、立法府に制度形成の余地を残す協働的なアプローチが採用されていることが指摘されているからである。なお、上記の研究課題を遂行する中で、課題テーマの必要に応じて、アメリカとの比較研究をすることも予定している。研究の成果については、琉球大学の紀要である『琉大法学』をはじめ、学会・研究会等での報告を通じて、発表を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
若手研究の独立基盤形成支援が加わったことにより、研究費が当初よりも大幅に上積みされたものの、前述のようにCOVID-19の世界的大流行により海外出張が実施できなかったこと、あわせて国内出張や学会への情報収集も同様に見合わせが続いたことにより旅費が予算を大幅に下回ったためである。2020年度においては当該年度の研究計画に沿った使用に加えて、2019年度に実施できなかった海外出張を実現すること、研究成果の報告や情報収集のための国内出張を増やしたいと考えている。
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