立法裁量統制としての準手続審査の理論的・実践的応用可能性を探究するという本研究の目的に照らし、当該審査手法の適用条件を実際に画定すべく、より積極的に同審査手法が適用され、事例も数多く存在する欧州に焦点を当てて研究を進める必要性があることを研究計画書において示した。それは、アメリカの判例・理論の中から、①準手続審査の現状分析、②準手続審査の理論的正当化という点について従来より研究を進め、一定の研究成果は得られたものの、適用条件の画定においては関連する判例・理論が量的に不足している点があったことが要因として挙げられるからである。こうした観点から、昨年度に引き続き、欧州司法裁判所や欧州人権裁判所の裁判例において展開される、準手続審査の適用領域やその適用条件を把握するために、各裁判所の判例や文献を収集するとともに、それらを分析・検討するなどの研究を進めてきた。他方、昨年度と同様に、最終年度もCOVID-19の世界的大流行の影響が依然として続いていることにより、当初から予定した海外出張による専門家へのインタビューは実施することができず、また、そのことに伴い、研究方法の変更の検討も余儀なくされた。 本研究期間全体を通じての研究の成果としては、立法府の裁量が――明示的であるか黙示的であるかを問わず――前提にされていることを裁判所による敬譲審査の根拠とする場合に、立法府には敬譲を導き出す条件として、立法の「合理性」を獲得する義務が存在し、裁判所としては立法府の当該義務を、立法過程を通じて適切に履行していると認めることができる場合に敬譲的審査を行うべきであるということである。
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