研究課題/領域番号 |
19K13502
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
張 栄紅 中京大学, 法学部, 准教授 (20737564)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公表 / ネガティブ情報 / 制裁的公表 / 法的統制 / 内部統制 |
研究実績の概要 |
本研究は、情報化社会におけるネガティブ情報(法違反や行政の指示・勧告・命令等に従わない者の氏名及び違反の事実)の公表に対する法的統制の在り方について、日本・中国・アメリカとの比較法的考察を行い、日本法に対する示唆を提示することを目的としている。 初年度である本年度は、日本法を中心に研究を進めた。具体的には、法律及び条例(47都道府県と20政令市)を精査し、ネガティブ情報の公表に関する条文規定の現状と問題点を考察したうえ、国の行政機関と47都道府県・20政令市のホームページに公表されているネガティブ情報を収集・分析し、公表の現状を明らかにした。それらを踏まえて、公表に当たっての行政機関の内部規定を調査し、公表に対する行政による内部統制の現状を分析し、公表に対する法的統制の特徴と問題点を検討した。 日本では、公表が義務履行確保の一般的な手段になっているものの、実務においては活用されているとはいえないことが判明した。法的統制については、公表の基準・期間・手続、削除の基準や救済手続が十分に整備されておらず、法的統制が十分ではないことが確認できた。とりわけ、国レベルにおいて、公表の基準と期間を定める行政内部規定がそもそも策定されていないものが多いことや、策定された場合でも、公表の基準と期間に関する取扱いが相当異なっているほか、公表された者に削除申出等の救済ルートを設けるものがないことが確認できた。法律に基づく公表の場合でも公表の具体的なルールに関する法的規律が欠けている状況の下では、国レベルにおけるネガティブ情報の公表に対する法的統制が極めて不十分といえる。ネガティブ情報の公表に対する法的統制の在り方を検討する必要性が高いことが改めて明らかになった。 上記について、中国の行政法研究会で報告を行ったほか、中国の法学雑誌への掲載が予定されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、当初の計画通り、日本におけるネガティブ情報公表の現状、行政による統制の現状と問題点についての分析はおおむね順調に進展している。本年度予定していたヒアリングや意見交換の一部は、COVID-19の影響により中止となったものの、書面やオンライン等の形式により行政による内部統制の現状に関する情報を入手し、検討できた。 また、2019年8月の中国の行政法研究会では、中国におけるネガティブ情報の公表について中国の研究者や実務家との意見交換を行い、2020年度における中国法の検討に示唆を得ており、中国法の検討にも着手できている。 研究成果の公表については、中国の行政法研究会で報告を行ったほか、中国の法学雑誌への掲載が予定されており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2019年度に研究を進めた内容に関する論文の公表を行う。また、中国法を中心に、中国におけるネガティブ情報の公表の現状を明らかにし、ネガティブ情報の公表に関する行政のルールを分析したうえ、中国におけるネガティブ情報の公表に対する法的統制の特徴を明らかにし、日本法との比較を行い、日本法への示唆を提示する。その成果を論説として公表するほか、研究会での報告をも目指す。 最も、2020年度の計画に予定している中国への現地調査は、COVID-19の影響により具体的な実施時期は見通せない。実施が困難な場合、オンライン研究会を開催し、中国の研究者や実務家との意見交換の機会を設けることを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していたヒアリングや意見交換の一部は、COVID-19の影響により中止となったため次年度使用額が生じた。 2020年度では、COVID-19の終息状況を考慮しつつ、ヒアリングや意見交換会の開催のために使用する予定である。実施が困難な場合、オンライン意見交換会を行い、2020年度で行う予定の研究計画と合わせて使用する予定である。
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