研究課題/領域番号 |
19K13502
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
張 栄紅 中京大学, 法学部, 准教授 (20737564)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公表 / ネガティブ情報 / 制裁的公表 / ブラックリスト制度 |
研究実績の概要 |
2020年度は、中国法を中心に研究を進めた。具体的には、中国の法律や地方立法を精査し、ネガティブ情報の公表に関する条文規定の現状と問題点を考察したうえ、国と地方の行政機関のホームページに公表されているネガティブ情報を収集・分析し、公表の現状を明らかにした。それらを踏まえて、公表に当たっての行政機関の内部規定を調査し、公表に対する行政による内部統制の現状を分析するとともに、公表に関する裁判例を収集・分析し、公表に対する法的統制の特徴と問題点を考察した。他方で、2020年度中に予定していた中国の現地調査についてはCOVID-19の影響により延期を余儀なくされた。その代替策として、2020年8月に中国の研究者とオンラインによる意見交換を行った。 中国では、ネガティブ情報の公表は、様々な行政分野において活用されている。中国のネガティブ情報の公表、とりわけ行政的ブラックリスト制度は、日本の公表制度とは異なり、情報の共有により多元的な主体による多様な分野での懲戒措置を実施するものであり、多様な主体の参加により行政目的を実現するものであって、新しい行政上の義務履行確保手段に位置づけられるとともに、情報を活用した新しい行政規制手法であることが判明した。しかし、行政規則を中心に構築された行政的ブラックリスト制度は、その制度設計や具体的な運用において多くの法的問題をもたらしているが、現在の制度設計では、ブラックリスト制度の濫用を防止する法的統制手法が十分でなく、私人の権利利益を侵害する可能性が常に存在していると指摘できる。 上記についての研究成果は、法政研究87巻3号(2020年)に公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度においては、当初の計画通り、中国におけるネガティブ情報の公表の現状、それに対する法的統制の現状と問題点についての分析はおおむね順調に進展している。2020年度中に予定していた中国の現地調査や意見交換はCOVID-19の影響により延期を余儀なくされたものの、オンラインによる意見交換を行ったことにより、一定程度の情報収集ができた。 2019年度の研究成果は、中国の法学雑誌への掲載が予定されたものの、COVID-19の影響により延期を余儀なくされたが、2020年度の研究成果は公表されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アメリカ法を中心に、アメリカにおけるネガティブ情報の公表の現状を調査し、ネガティブ情報の公表に対する法的統制の特徴を明らかにしたうえ、日本法と中国法との比較を行い、示唆を提示する。その成果を論説として公表する。 また、2019年度の研究成果の公表を行うとともに、COVID-19の状況を踏まえつつ中国の現地調査を検討する。2021年度中に行うのは困難な状況であることが予想されるため、オンライン調査にするか、2022年度以降の実施を予定するかを含めて、今後の方針を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度中に予定していた中国の現地調査は、COVID-19の影響により実施できなかったため、次年度使用額が生じた。今後、現地調査が可能になりうる時期を見定めた上で、次年度に繰り返すか、オンライン調査にするか、検討する。
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