本研究は、法制度の変更がなされる場合、従前の法制度への信頼はいかなる場合にどの程度保護されるのかという問いに憲法の観点から取り組み、信頼保護原則に関する検討を行うものである。特に、ドイツにおいて議論が盛んにおこなわれている憲法上の信頼保護原則の保障内容と機能、限界を検討することを課題として研究を進めてきた。 今年度は、検討の素材として租税法領域における裁判例を取り上げ、信頼保護原則に関するドイツ連邦憲法裁判所の判例理論の現状把握につとめた。憲法上の信頼保護原則が憲法判例においてどのように用いられているかを具体的に検証した。そして、審査において重きが置かれる保護に値する信頼が存在するかという点について、従前の判例の状況や、実務の取扱い、学説の議論状況などの詳細な検討が行われていることを示した(雑誌論文1.及び学会発表1.)。 また、今年度は本研究課題の研究最終年度であったため、研究を総括すべくドイツにおける基本権論の展開の中に信頼保護原則を位置付ける試みを進めてきた。ドイツにおいても基本権論と信頼保護原則の関係は未だ明確にはなっていないと言われるところであるが、この試みを通じて、信頼保護原則の基礎付けを問い直し、また、同原則の基本権論への統合の在り様を描き出すことを目指した。研究期間の途中での研究の遅れにより、今年度中に全体的な成果を公表するには至らなかったものの、次年度中にとりまとめることを予定している。
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