研究課題/領域番号 |
19K13505
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
漆 さき 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (00735045)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際租税法 / 納税者の権利保護 / 情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本における租税上の情報交換に関する具体的な手続の整備を最終目的とし、その第一段階として、まず「租税情報の取得収集・交換と、プライバシー権・自己情報コントロール権との関係を検討し、交換される情報に課されるべき制約と、当該制約違反の結果として与えられるべき救済は何かを整理する」こととしている。この問題に関連して、2022年には、自動的情報交換等によって、課税に関して莫大な個人データがやり取りされる中で、納税者の権利はどの程度、そしてどのように保障されていくべきか、という問題意識の下、EUを取り上げた。そして、データ保護法制と課税分野における自動的情報交換につき、①その目的が調査の効率化と租税回避・脱税の抑止だとすれば、自動的情報交換はデータ保護法制の下で目的に比例的な手段だと考えられること、②データ流通を促進するために、納税者には基本的にデータ保護法制の下で認められる通知を受ける権利、アクセス権および訂正権が保障されるべきことを述べた。データ保護法制の世界的な広がり等を考慮すれば、日本においてもこれらの権利の保障を検討する意義はあると考えられる。 また、租税情報の国際的交換は、その情報のやり取りが電子化したことで飛躍的に情報の流通量および流通速度が向上しており、税務行政のデジタル化と深い関係を有している。日本国内の地方自治体における税務行政のデジタル化について、現状を確認することは本研究の広がりを考える上で意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
育児休暇からの復帰後、子の体調不良や入院、在外研究の準備、在外研究先での生活基盤の安定など、研究以外の家庭生活にリソースを割く必要が生じ、研究に従事する時間を十分に取れなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、プライバシー権および納税者の防御権といった観点から分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
子の入院や在外研究先での生活の安定等、家庭生活にリソースを割かざるを得なかったことから、研究に割く時間が少なく、必要な書籍の購入、遠方の研究会への参加も十分に行えなかったため、研究費の執行が減ってしまった。在外研究からの帰国後は、生活拠点を改めて整える必要はなく、子の成長に伴って健康状態等も改善していることから、研究に従事する時間は増加すると見込んでいる。 今後は、EUにおける刑事共助および行政共助に関する書籍など、少し租税から幅を広げて文献収集を行い、また、その専門家にコンタクトを取ることを検討しているため、そのための経費を支出予定である。
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