研究課題/領域番号 |
19K13507
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
山本 健人 大阪経済法科大学, 法学部, 助教 (60828937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 憲法 / 信教の自由 / 政教分離 / カナダ憲法 / 合理的配慮 / 公的空間 / 多様性 / 多文化主義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多文化社会へと変貌しつつある我が国にとって近い将来確実に向き合わなければならなくなる多様な宗教的価値観の調整という問題に対して、憲法学の観点から有用な解決策を示すことである。 本研究課題の1年目にあたる本年度では、研究環境の整備を進めるとともに、我が国において、近代的な信教の自由及び政教分離原則の再構成が本当に必要なのかを検討する。このような再構成の必要性を検討するにあたって、日本の信教の自由論について整理検討する論稿(「信教の自由の保護領域と制限の正当化」憲法理論叢書㉗)を公表し、政教分離原則に関する論稿を脱稿した(現時点では未公表)。 前者では、日本の憲法判例・学説とカナダの憲法判例を比較し、①信教の自由の保護領域論に関わる宗教の定義について、宗教を主観的に定義するカナダのアプローチの持つ有用性、②信教の自由制約を正当化する審査枠組みとして、合理的配慮分析や憲法上の価値を考慮する判断過程審査がありうることを示した。カナダのアプローチは、多様性の時代とも呼ばれる現代社会において、まさにこの問題と向き合い続けてきた信教の自由論といえ、日本の判例の視点を補うものと考えられる。 後者では、リベラリズムを前提とした日本の憲法解釈論においても、「ある人の有する根底的な価値観から政治的道徳を分離させる能力にではなく、他者の有する深刻な問題関心や利益、あるいは共通善を他者とともに追求しうる我々の意思に着目する方向性もありうる」ことを示すことができたと考えている。 また、2年目以降の研究計画に関わる内容についても、いくつか研究成果を公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、1年目の研究課題として設定した研究成果について一部を公表することができたため、「概ね順調に進展している」と評価することができる。もっとも、いくつかの論稿については、書籍に収録されることとなったため、公表時期が遅れている。また、2年目の研究課題に関わる研究成果についても、いくつか公表することができている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度及び2021年度については、カナダへ渡航し現地調査を予定していたが、昨今のコロナ情勢の関係でこの点の研究計画については大幅に変更する必要がある。遠隔通信技術などを駆使し、現地調査と同等の研究を実施可能か検討中である。現地調査の実施に影響しない文献研究に関わる点については当初の計画通り進めることができると思われる。 2020ー2021年度では、「公共討議における宗教的価値観の許容可能性」と「宗教に対する合理的配慮」について、カナダ憲法との比較研究を行う予定であった。このうち前者については、2019年度にいくつかの研究成果を公表することができたため、2020年度は「宗教に対する合理的配慮」に関する研究を重点的に行うこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末付近で購入した洋書につき、コロナ感染症の影響で発送されなかったため、一部決済を行うことができなかった。
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