2022年度の目標は、日本における信教の自由と政教分離原則の再構成を検討することであった。この目標の大部分は、本研究課題の集大成ともいえる博士論文「承認と対話の憲法理論」(2021年度に慶應義塾大学から博士(法学)を授与)に結実している。本年度は、同博士論文の書籍化に向けたブラッシュアップを行う中で、上記目標についても改めて見直し、包括的な検討をおこなった。また、2022年7月に発生して安倍元首相銃撃事件を契機としていわゆる「カルト宗教」に関する問題がクローズドアップされた。このテーマの考察が本研究課題にとっても重要であったため、この点の検討も行った。 以上の検討成果の一部は、2023年度に公刊予定の論文および書籍(共著)にも反映されている。 また、本研究課題ではカナダでの現地調査を予定していたがコロナ禍の中で最終年度までその実施が困難な状況であった。最終年度にカナダでの現地調査を行うことも検討したが、コロナの影響が弱まったとはいえ、まだ強くのこっている情勢の中でアポイントを得ることが難しかった。他方で、本研究課題で得られた知見を基にした研究報告を国外に発信する機会に恵まれたため、カナダでの現地調査の計画を変更し、Trinity College Dublin(Ireland)で開催されたシンポジウム(Understanding the Constitution of Japan: comparison and analysis)にて、“Recent Religious Cult and The Constitution of Japan”について研究報告をおこなった。
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