本研究は、多様化する生き方や家族の形と租税法の関係について、各国・地域での法制度の創設に伴う議論と、これらに係る法の解釈を考察することを目的としている。個人の生き方のうち、特に配偶者との関係性に着目し、租税法上の配偶者やパートナーシップの概念を研究の対象として、同性婚配偶者および登録パートナーシップ制度のパートナーらを租税法上どのように解釈すべきかにつき、比較法的考察を試みるものである。 感染症拡大等の影響によって、本研究は当初の研究期間を延長し、本年度が最終年度となった。本年度は研究の最終目的である、「配偶者」概念の統一的解釈アプローチを示し、新たな租税法のあり方の提言を達成するために、解釈論の研究に着手した。解釈論の研究は、当初の研究期間では多くの時間を確保することが難しかったが、期間を延長することによって本年度の研究実績を得ることができた。 前年度は、各国の制度改正の把握と論点整理、改正前後の制度比較検討を行い、本研究でとりあげた同性カップルと租税法をめぐる多くの論点および各国の判例について、最新の法制度に基づく比較・検討を実現させた。 本年度はこれらをもとに、配偶者およびパートナーの解釈的アプローチを試みた。具体的には、アメリカのような通達による解釈変更について、日本における可能性を検討するために、行政通達の性質とその規範性について行政法と租税法のそれぞれの学説および判例の検討を行った。その結果として、租税法における通達の位置付けおよび規範性の特性を分析することができた。
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