研究課題/領域番号 |
19K13509
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
宮内 紀子 九州産業大学, 基礎教育センター, 講師 (70755800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国籍 / 外国人 / 国民 / 憲法 / 選挙権 / イギリス |
研究実績の概要 |
本研究は国籍を再検討するものであり、研究領野は年度ごとに異にする。2019年度の研究対象領野は「被選挙権・選挙権の付与の範囲」であり、制定法、議会での議論および学説などを中心に研究を実施した。 国籍の付与の範囲を決定する国籍法は通常、国家の形態が強く影響する。ところが第2次大戦以後、大英帝国が徐々に崩壊する中でも国籍法は変わらず、旧植民地市民やコモンウェルス構成国市民も含め広範に法的地位を付与し、外国人とは区別していた。2019年度の研究では、連合王国では選挙権・被選挙権の付与の範囲も国籍法と同様、この100年間、実質的な変更は行われておらず、加えて変更の必要性について関心が低く、議論すらほとんど行われていない状況が明らかになった。選挙権・被選挙権の付与という領野についてみれば、連合国の国籍概念には、国家と個人の間の歴史的関係も含まれていることが明らかになった。この関係性は国家と個人の実態的な関係性以外のものも含んでいるということである。 国籍は個人と国家の関係性を明白に示すものとされ、日本では、日本国籍を有する者は当然にすべての権利を有する。国籍による画一的な法的構成員性が存在し、とりわけ選挙権・被選挙権は日本国民にのみ享受が認められないものとされている。この法的状況の前提には国籍が示す国家と個人の関係性が実態的なものしか含まないというものがあると思われる。しかし、連合王国についての2019年度の研究からは、選挙権・被選挙権について言えば、国籍が示す国家と個人のつながりは一定のものではないことを示すことができた。 とりわけ国民に限定されることが当然と考えられがちである選挙権・被選挙権の付与の範囲において、国家と個人の関係性という観点における国籍の曖昧さを明らかにすることができたことは国籍研究の発展的な意味合いを持つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記した通り、2019年度は連合王国における被選挙権・選挙権の付与の範囲から国籍概念を検討し、100年間、実質的な変更は行われておらず、加えて変更の必要性について関心が低く、議論すらほとんど行われていない状況を明らかとした。そして選挙権・被選挙権の付与という領野についてみれば、連合国の国籍概念には、国家と個人の間の歴史的関係も含まれていること、この関係性が国家と個人の実態的な関係性以外のものも含んでいるという結論を導いた。現在、この研究結果を論文執筆中であり、本学大学紀要に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、各年度、領野ごとに国籍概念の再検討を行う。2020年度は社会権の付与の範囲からみる構成員について、資料収集・分析を行う予定である。なお、本年度、欧州に渡航し、連合王国の憲法研究者と面談を行うなど、連合王国の国籍概念を巡る議論状況を確認する予定としていたが、新型コロナウィルスの流行のため、実施できるか未定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
選挙権・被選挙権について当該年度は必要な書籍を購入し、残額が生じた。残額は次年度、選挙権・被選挙権について追加で研究の必要が生じた場合に、執行する予定である。
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