研究課題/領域番号 |
19K13510
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
堀口 悟郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40755807)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大学の自治 / 学問の自由 / 大学進学制度 / 大学教員の雇用契約上の権利 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究は、主として以下の三点にまとめられる。 第一に、日本における学生参加制度の歴史や、1960~70年代の憲法学における学生参加に関する議論の検討を進めた。このテーマについては、2020年度以降に論文を発表する予定である。 第二に、大学進学制度を大学の自治および学生の参加権の観点から考察しなおすという作業に着手した。憲法学の観点から大学進学制度について考察した研究は極めて少ないが、大学進学制度は大学の自治研究にとって重要なテーマの一つになると考えている(具体的な問題意識については、2020年度以降に発表する論文のなかで示したい)。2019年度には、当該研究の手始めとして、フランスにおいて2018年に実施された高等教育進学制度改革に関する立法紹介である、堀口悟郎「高等教育進学制度改革――学生の進路指導及び成功に関する2018年3月8日の法律第2018-166号」日仏法学30号(2019年)103-107頁を発表した。 第三に、大学の自治と学問の自由の関係をめぐる一つの論点である、大学教員の契約上の権利に関する研究に着手した。大学教員は大学(法人)に雇用される労働者であり、その雇用契約によって権利および義務を規定されている。そして、対国家的権利である学問の自由を、大学(法人)と教員との雇用契約に直接適用することは難しい。そのような状況のなかで、いかにして大学教員の学問の自由を確保するか、というのが本論点である。2019年度は、この論点を検討するうえで格好の素材となる裁判例について検討し、堀口悟郎「大学教員の雇用契約上の権利」法学セミナー780号(2020年)110頁を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な研究内容である「日本における学生参加制度の歴史的発展」および「1960~70年代の日本憲法学における学生参加に関する議論」について論文等を発表するには至らなかったが、その研究を進めるなかで、「大学の自治と大学進学制度」という新たな論点や、「大学教員の雇用契約上の権利」に関する注目すべき裁判例などに気づくことができ、なおかつ、それらに関する立法紹介や判例解説を発表することができた。このように、当初の研究計画よりも広い視野で「学問の自由論における学生参加の再定位」という問題を捉えられるようになったため、研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降は、日本における議論について論文の執筆を進めるとともに、フランスにおける学生参加制度の考察に入っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の途中に所属機関が変わった関係上、移籍前後の期間において研究が停滞したため、未執行額が発生した。この分は、2020年度において、研究上重要な書籍の購入などに充てる予定である。
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