研究課題/領域番号 |
19K13510
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
堀口 悟郎 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (40755807)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学生参加 / 大学の自治 / 大学教員の独立 / 研究者の独立 / 教育基本法 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、「学生参加」と「大学教員の専門職能自治」との両立が実現しているフランスにおける議論を参照することで、学問の自由論における学生参加の再定位を試みることを目的としている。2021年度も、この目的に沿って、学問の自由および学生参加に関する日仏比較研究を進めた。 フランスにおける学問の自由論に関しては、同国において「大学の自由」と総称されている、大学教員の学問活動に関する法規範、すなわち、①学問の自由、②大学の自治、③大学教員の独立について、それぞれの意義および三者間の関係を考察した。特に、近年の大学制度改革が、フランスにおける「大学の自由」にいかなる影響をもたらしているのか、という点を重点的に検討した。 日本における学問の自由論に関しては、従来学説が十分に注目してこなかった教育基本法7条1項の意義について考察した。また、今日においても最も有力な学説といってよい、高柳信一の学問の自由論について、その今日的意義や限界等を考察した。さらに、近年で最も重大な学問の自由問題といえる、日本学術会議会員の任命拒否事件について、学問の自由および研究者の独立の観点から考察を加えた。これらの研究により、フランスにおいて生成された「大学教員の独立」という法規範が、日本における学問の自由保障にも接続可能なものであること。さらには、「大学教員の独立」よりも広範な射程をもつ「研究者の独立」という法規範まで認めうることを、ある程度明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスにおける学問の自由論については、その研究成果を、堀口悟郎「フランスにおける大学の自由」羽田貴史ほか編『学問の自由の国際比較』(岩波書店、2022年)65頁以下等として発表することができた。 また、日本における学問の自由論については、その研究成果を、堀口悟郎「第7条第2項(大学の自主性・自律性)」日本教育法学会編『コンメンタール教育基本法』(学陽書房、2021年)233頁以下、同「学問の自由論の金字塔」季刊教育法212号(2022年)84頁以下、同「日本学術会議問題と学問の自由」日本教育法学会年報51号(2022年)等として発表することができた。 このように、2021年度は、日仏両国の学問の自由論について着実に研究を進めることができ、また、その研究成果を複数の論考として発表することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、学問の自由および学生参加に関する日仏比較研究を継続していく予定である。具体的なトピックとしては、学生参加に関わる近年の重要論点である、「学生の授業アンケートと大学教員の学問の自由」という問題について、最近の判例を素材とした研究を行うことなどを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究活動が制限され、特に出張ができなかったことから、次年度使用額が生じた。この残額については、2022年度に、オンラインでの研究環境を整えることや、関連書籍を購入することなどに使用する予定である。
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