本研究課題は、「学生参加」を学問の自由論のなかにいかに位置づけるかという古くて新しい問題を探究し、当該テーマに関する先進国といってよいフランスの議論を参照することで、「学生参加」と「大学教員の専門職能自治」を両立しうるような学問の自由論の構築をめざすものである。 最終年度である本年度は、「大学教員の専門職能自治」(大学教員の独立)に対する「学生参加」の優越が認められうる「教育」の領域に焦点を当てた。研究とは異なり、教育については、学生の教育を受ける権利を十分に尊重すべきであり、教員の教育の自由や独立も、学生の教育を受ける権利を実現するための「手段」という性格をもつものと考えられる。もっとも、教育は「研究成果の発表」という側面も有するし、良質な教育を実現するためにこそ教員に高度の自由や独立を認めるべきだという議論もありうる。このような両者の複雑な関係性について考察した。 その際に着目したのは、初等中等教育における教師の教育の自由に関する議論である。初等中等教育における教師の教育の自由については、大学教員のそれに比して、「研究発表の自由」という性格が強調されることは少ない。また、児童生徒の教育を受ける権利の実現を目的として認められる「手段的権利」であり、教育を受ける権利による制約を受けることが当然に予定されているものと解されている。こうした初等中等教育における「教師の教育の自由」と「児童生徒の教育を受ける権利」との関係性に関する議論は、大学における「教員の専門職能自治」と「学生参加」の関係性を考察するうえで、非常に示唆的である。
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