研究課題/領域番号 |
19K13511
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
周 セイ 久留米大学, 法学部, 教授 (50633476)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 公契約 / イギリス |
研究実績の概要 |
今年度は、新型コロナウイルス感染症の緩和により、当初、一部遅延または中止となった計画の実施が再開に向かって検討された。 まず、2022年末頃、研究計画の遅延対策として、より連携を取りやすい台湾まで比較研究の対象を広げ、台湾における公契約論の現状及び民営化時に契約の導入に関する法的仕組みの実態について、台湾の公法学者である東呉大学教授程明修氏を招へいし、久留米大学において研究会を開催し、並びに意見交換を行った。程教授は「台湾における公契約論の導入ードイツ法からの影響」というテーマにつき報告を行い、申請者はコメントとして、日本における公契約論の現状を紹介した。また、相互に報告を行った上、意見交換も行った。台湾及び日本は、公法分野においてドイツ法からの影響を強く受けていたことから、公契約の運用上、一定の共通性がみられるとともに、一部の公用事業においては公営という形態が台湾、日本においても維持されていることから、両者の比較が大変有意義な作業である。研究会の成果として、中国語で論文を執筆し、台湾で出版される予定である。 次に、イギリスへの渡航が可能になった直後、早速先方の学者と連絡をとり、現地でのヒアリング及び意見聴取について打診をしてみた結果、2023年2月中旬から約三週間の現地滞在ができ、その期間中に①関連の情報及び資料収集を行い、②元ブリストル大学教授のTony Prosser氏と意見を交換し、専門的なアドバイスを伺うほか、③オックスフォード大学教授のAnne Davies氏に訪問し、意見を交換した上、継続的・中長期的に連携を取りながら、本研究課題について研究会を立ち上げることについても合意ができた。また、イギリス渡航中に収集した情報・資料及び両学者からいただいた専門家意見等に基づき、民営化時に規制手法として用いられた契約の実態を整理し、公表論文として執筆しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、当初予定していた計画の実施が約3年ほど遅れており、特に計画上に重要な役割を有する①海外で実施する最新資料・入手限定の資料や文献の収集、②現地調査及び学者・実務家意見のヒアリングなどの実施が、2023年に入ってからようやくできるようになった。再開が遅かったことで、従来の計画上、数回にわたって実施予定の資料や文献収集・学者意見のヒアリング・実務家の意見聴取等が現時点では一回のみ実施できており、分析用のデータ等が不足している問題が依然として存在する。また、計画が停滞している期間中に、研究対象であるイギリスにおいては新たな動きがみられたことから、新しい状況に関するフォローが必要となり、現在の研究計画を適宜に変更・修正するほか、新たな研究課題を立ち上げる必要性も検討しなければならない。 なお、本研究については、研究期間の延長が認められたため、予定より遅延・中止等が生じていた計画の一部については、延長の期間内にその実施を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、以下のように推進していく予定である。 ①資料・文献収集については、2023年8月中に渡航し、現地においてその作業を完成する予定である。その際に、ロンドンの高等法学研究所(IALS)図書館及びオックスフォード大学法律図書館などを利用することを検討する。特に、イギリス国内においてのみ閲覧が可能な官報、政府の調査報告や文献収集用のデータベースを利用する。 ②イギリスの学者と定期的に研究会を開催し、意見交換をしながら比較研究を行っていく予定である。また、規制庁・事業者等のヒアリング調査も可能な限り、実施を予定している。 ③成果の公表については、現在、執筆中の論文が2本あり、それぞれ台湾・日本国内において公表する予定である。また、研究の進展状況に基づき、さらなる成果の発信を行っていく。 ④今までの計画実施は新型コロナウイルス感染症の影響を多く受けており、仮に今後、同じように、不可抗力などの事情が発生することにより、研究計画の実施にやむをえない支障が生じた場合、速やかに計画を変更し、遂行可能な施策を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の実施にやむをえない遅延事由が生じたため、当該年度に予定されていた海外渡航に関連する費用、資料・文献収集に関連する費用等の支出ができていない。また、研究の再開に伴って、計画を適宜に修正したうえ、海外への渡航及び現地での資料収集、学者意見交換等の実施を2023年の夏ころに再度予定している。なお、次年度使用額については、資料収集に伴う印刷代、消耗品等の購入費用、海外渡航時に発生する旅費、滞在費などに充当する予定である。
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