研究課題/領域番号 |
19K13513
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
森口 千弘 熊本学園大学, 社会福祉学部, 講師 (70808534)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 思想・良心の自由 / 信教の自由 / アメリカ憲法 |
研究実績の概要 |
本研究は、思想・良心の自由にかかわる日米の憲法学の比較法的検討を通じて、この自由の原理論的考察を行うものである。このために、本研究は以下の三点を目的とする。 第一に、アメリカにおける思想・良心の自由の大きな保護枠組みの解明である。具体的には制約の様態・保護のあり方に焦点を当て、この分野におけるアメリカの理論的到達点の所在を示すことを目的とする。第二に、アメリカと日本の比較法的研究をおこなう。具体的には、アメリカの理論と日本のこれまでの判例・理論とを比較し、両国の独自の問題の所在を示すとともに、思想・良心の自由の普遍的な理論を明らかにすることを目的とする。第三に、発展的・学際的研究を行う。具体的には、教育法・法社会学など法学の諸分野、あるいは教育学や社会学などの成果を参照しながら、上記の原理論的考察とあわせて、思想・良心の自由実現のための制度的条件や課題などを明らかにすることを目的とする。 本年度の研究においては、第一の目的であるアメリカにおける思想・良心の自由のあり方について、「思考プロセスの自由」論の研究をおこなった。この研究から、国家権力は個人の内心に作用するような特定の類型の規制について憲法上の制約を受けること、この制約の憲法学的意味については、国家権力の限界論から説明する立場と主観的な人権論から説明する立場に対立があることを明らかにした。また、従来研究を進めてきた「法義務免除」論にかかわる研究成果とあわせて、アメリカの思想・良心の自由が①思想狙い撃ち的な規制の禁止、②各人の良心保護のための例外的義務免除、という二元的な枠組みを採用していることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の進捗はやや遅れている。アメリカの「思考プロセスの自由」の分析については、公表論文、学会発表を行うことができ、順調に進捗している。一方で、2018年にアメリカ合衆国連邦最高裁判所で出されたMasterpiece Cakeshop v . Colorado Civil Rights Commission)584 U.S. ___ (2018)を契機として、本研究にかかわる重要な学説が数多く公表され、新たな論争を生んでいることから、これに合わせて当初の研究計画の変更を行った。これにより、研究は当初の計画からやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Masterpiece Cakeshop v . Colorado Civil Rights Commission)584 U.S. ___ (2018)を契機として、本研究と密接にかかわる二つの問題が提起された。第一に、思想・信仰に対する敵意に基づいた規制の憲法問題である。この問題は本年度に研究をおこなった「思考プロセスの自由」論、なかでも特定の思想への好意・敵意に基づく国家活動への規制の問題と密接に関連する。第二に、「人権の武器化」の問題である。思想・信仰を保護するための便宜的措置(accomodation)により、同性愛やジェンダーなど他の人権を保護するための立法が形骸化する弊害が指摘されている。 これらの二点は、いずれも本研究の根幹にかかわる問題である。したがって、今後の研究の推進に際しては、これらの二点についての研究を優先的に行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった図書の発売が延期されたため次年度使用額が生じた。次年度は当該図書の購入に使用する。
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