本研究の目的は、国際刑事裁判所(ICC)や、近年増加する混合法廷や特別法廷といった、いわゆる中核犯罪の訴追および裁判を行う機関において適用される、「国際的に認められた人権基準(人権基準)」という規範の法的性格と内容について明らかにすることである。初年度には「人権基準」の法源の一つと考えられる「一般原則」に関するこれまでの研究をまとめた書籍の出版、および一般原則に関する新規理論に関する英語論文の執筆を行った。2年目には「人権基準」の内容について、①関連法令(条約)の条文解釈(法令調査)の上、②既存の解釈の妥当性を分析したのち(文献調査)、③判例を用いた実証分析(判例調査)を行った。3年目には、「人権基準」の法的性格について、問題背景の調査という過年度の積み残し分と合わせ、①既存の研究を分析(文献調査)の上、法源論に関する理論的仮説を提示したのち、②判例を用いた実証分析(判例調査)を行った。 最終年度である本年度は、これまでの成果をまとめ、①「一般原則」の認定に関わるものについての英語論文('The New Recipe for a General Principle of Law')、②ICCにおける恩赦に関する一般原則と解釈の問題についての英語論文('Taking Illegal Amnesties Seriously’)、および③研究全体をまとめた論文(「国際刑事裁判所判例における「国際的に認められた人権基準」の機能と法的性質」)を発表した。また、ICCにおける一般原則に関する書籍(『国際刑事手続法の原理』)を出版した。さらに、やり残していたICCでの「人権基準」の認定方法についての研究についての研究報告を行った("The Revival of General Principles of Law Recognized by‘Civilized Nations'")。
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