2022年は海洋法条約の採択から40周年ということで、様々なイベントが世界中で行われ、それらに精力的に参加した。とりわけ、韓国の研究機関、大連大学、ハワイ大学が開催した、UNCLOS in Asia Pacific: 40 Years and Onwardsと題するシンポジウムでは研究報告を行い、アジア太平洋地域の先生方を中心に意見交換を行うことができた。同シンポジウムでは、UNCLOS裁判所が境界画定をしても、それが大陸棚限界員会の手続きを進めることにつながらない点を問題視し、委員会はUNCLOS裁判所の意見を積極的に受け入れるべきことを南シナ海の文脈で論じた、”The Effect of the Judicial Decision of UNCLOS Tribunals on the CLCS Procedure: in the Case of the South China Sea Dispute”と題する報告を行った。この報告を基にして論文を執筆し、Asia-Pacific Journal of Ocean Law and Policyの第7号に論稿を掲載することに成功した。また、UNCLOS裁判所の事項管轄権の射程について、Enrica Lexie号事件を中心に、近年、興味深い先例が蓄積していることから、これらの分析を行った。とりわけ、国際裁判の基本原則である、裁判所の管轄権は合意に基づかなければならない、という原則に反するような、UNCLOS裁判所の管轄権の拡張について、UNCLOSの規定をどのように用いてそのような拡張が為されてきているかについて検討を進めている。この研究についても英文で論稿を執筆しており、近く発表する予定である。
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