研究課題/領域番号 |
19K13524
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研究機関 | 高岡法科大学 |
研究代表者 |
吉田 靖之 高岡法科大学, 法学部, 教授 (70748285)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Operational maritime Law / 武力紛争法 / 海戦法規 / 海洋法 |
研究実績の概要 |
2020年度も、「科学技術の発達が開戦の手段及び方法に与える影響」というテーマの下、海上における自律型兵器について鋭意研究を進捗している。当該年度においては、コロナ禍の状況下にあって、当初計画していた海外における国際会議及び国内学会への参加が困難となった。然るに、2019年度に実施したジュネーヴ出張の成果を踏まえ、上述のテーマにつながる関連テーマとして自律型殺傷兵器の規制をめぐる最新の動向に関する論説を、『国際公共政策研究』(大阪大学国際公共政策研究科)第25巻1号に発表した。この業績は、陸上における自律型兵器の規制に関し、特定通常兵器使用禁止制限条約政府専門家会議における審理の状況を仔細にトレースし、それらを武力紛争法の観点から評価したものである。このような作業を通じて、次の段階である海戦における「新たな」手段(武器)の規制の在り方について、一案が得られたものと思料される。 さらに、上記テーマは海洋法の一般法である海戦法規上の論点であることから、海洋法に関する理解が前提となる。その意味で、当該年度には、海洋法上の一大原則である公海航行の自由との連関を有する判例について触れる機会を得た。右原則は、武力紛争中も継続して適用され、特に、交戦国は武力紛争非当事国が公海を使用する権利についても妥当な配慮を払うこととされていることから、公海自由原則を扱った判例に対する理解は必須である。そして、これらに関して勉強した成果を、『高岡法学』(高岡法科大学)第39号に評釈を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により、主として国際会議等への出席が困難となっていることから、テーマに関する最新の情報の入手にやや支障をきたしていること、及び類似の学問的関心を有する他の研究者との交流も容易ではないことが、理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度もコロナ禍の下にあることから、研究を進めるにはやや困難な状況にあることは本年度も変わりがない。然るに、世の中では「with COVID-19」の状況が所与のものとなりつつあり、それなりの研究環境も整いつつある。そこで、本研究は3年が原則とされているが、研究期間を1年延長し、まずは計画を再構成することとする。そのうえで、本年度は、昨年度の成果を踏まえてさらに前進し、「海上における自律型兵器」の法的地位について海洋法及び海戦法規の観点から分析し、それを論文として発表することを目標とする。幸いなことに、研究に必要な資料は概ね手元にそろっており、現在はそれらを処理して論文に使用な能な状態への変換する作業を実施中である。 また、論文執筆のための研究会における報告についても、母校(大阪大学)の国際法研究会のほか、国際法研究会(京都大学)といった部外の研究会においても報告の機会を得られる見込みである。このような機会を通じて、論文の内容をより充実したものとして行く所存である。 さらに、次年度に取り扱う予定であり、「海上におけるサーバー戦(海戦の方法)と海戦法規」に関する研究資料の入手についても、鋭意実施中である。このテーマは文字通り最新のテーマであり、研究が先行している海外学界の動向を探ることが不可欠である。したがって、2022年度には何とかコロナ禍が収まっていることを期待しつつ、関係各部との連携を密にすることにより、研究を進める所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、2020年度においては計画していた国内外出張(国際会議、学会及び研究会参加)が全く実施できなかった。研究機関を一年延長することにより、右差額については2022年度末までに使用を完了する予定である。
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