本科研の研究主題である「科学技術の発達が海戦の手段および方法に与える影響」に関し、これまで①出現しつつある技術を搭載した無人の兵器(自律型殺傷兵器)をめぐる国際法上の論点および②海上における自律型兵器(海戦の手段)についての研究を行い、それぞれ論文を発表してきた。まず、①については、2019年8月に自律型殺傷兵器の規制にかかわる特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)政府専門家会同に参加し、最新の知見を得るともの、それを論文として発表した。また、②については、上記を踏まえて無人海上システムの海戦法規上の位置付けという論点を手がかりに、海戦法規上の軍艦の定義の新展開について検討を行い、論文を執筆した。さらに、軍事科学技術が海上作戦に及ぼしている具体的影響として、交戦国が一定の範囲内の海洋空間を排他的に使用し通航船舶の管制を行うことを趣旨とする作戦海域の実行の法的評価について、国際法学会(第122年次研究大会)において報告を実施した。 上記を踏まえ、最終年度である2023年度には、は、左記の学会報告に加筆および修正を踏まえた論説を『国際法外交雑誌』に掲載することができた。これは筆者が国際法の勉強を開始して以来常に目標としていた事項であり、これが達成できたことは本研究の最大の成果であるとともに、そのことにより、筆者の国際法に関する研究が一つの区切りを迎えることまできたと考える。さらに、『海上作戦法規に関するサンレモ・マニュアル』についての解説を国際ア安全保障学会50周年記念出版物に掲載した。加えて、昨年度9月に海上作戦法規専門家が一堂に集うビクトリア(カナダ)における国際会議に参加して欧米の研究者との意見交換を通じて最新の知見を得ることができた。これらを通じて得られた情報を基に、海戦法規に関する最新のマニュアル(Newport Manual)の解説を発表した。
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