本年度はまず、宇宙空間における企業活動に由来する第三者賠償責任に関し、免除に焦点を当てて検討を行った。国の宇宙活動を企業が担う事例が増える中で、当該企業への民事訴訟の可能性も指摘されているが、宇宙活動における免除については国連裁判権免除条約でも特段の定めはなく、今後の検討に委ねられている状況であった。そのため、企業が開発運用する衛星コンステレーションを国家が安全保障目的等で利用する場合を例として、法的論点の整理検討を行った。具体的には、企業活動に対する免除の射程や不法行為例外等の論点を整理した上で、宇宙空間における領域主権の否定、サイバー法との関わり、更には軍民両用等の宇宙活動特有の要素を踏まえ、潜在的な法的論点の検討を行った。研究成果は、33rd International Symposium on Space Technology and Scienceにおいて報告を行った。 研究期間全体を通じ、請求、国家と私人の紐帯、および免除という3つの観点から、宇宙空間における企業活動に由来する第三者賠償責任を検討してきた。これらは、宇宙ビジネスが拡大する中で、企業に対する規範の執行面に着目した検討であるが、研究を通じ、前提となる規範の適用面も併せて検討が必要であることが明らかになった。そのため、総括も兼ねた検討を行った。即ち、従来の宇宙法の議論が、国際法(宇宙条約等を含む)、国内行政法(国内宇宙法等を含む)、および民事法(国際私法等を含む)の分野毎の視点に基づく検討が大勢であったことを踏まえ、宇宙空間の企業活動に対する規律構造という俯瞰的な視点から、整理検討を試みた。具体的には、月面を履行地にした宇宙資源売買等の商行為等に関して、特に立法管轄権の域外適用と準拠法設定の関係の観点から、法的論点の識別と検討を行った。研究成果は、第65回宇宙科学技術連合講演会において報告を行った。
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