本研究は、差別禁止や合理的配慮といった平等取扱いと、特定のマイノリティを優先的取扱うアファーマティブ・アクション(AA)が、相補的に機能する運用について検討するため、アメリカの連邦政府機関が障害のある職員を増やすために実施しているAAを研究対象とするものである。 一昨年度と昨年度は、制度の詳細を把握することに注力してきたため、今年度は、次の3つの問いに対する有効な回答を得るため、インタビュー調査を予定していた。しかし、今年度もインタビュー調査もしくは現地調査の実施は難しく、文献調査のみとなってしまった。問い1. アメリカでは競争的な労務に従事する価値をどのように捉えているのか、2. マイノリティ の配置分布の偏りから職場内のバリアの存在を想定し、バリアを特定、除去するアプローチの妥当性と有効性は担保されているのか、3. 中間レベル以上のポストに 占める障害者の割合が目標数値に達しない要因に、労働力の供給側(学校や民間事業者)に問題はないのか。 とはいえ、連邦政府機関のAA計画に加え、雇用機会均等委員会(EEOC)や会計監査院(GAO)による評価も含めて、上記2のバリア分析の有用性を検討してきた。また、障害分野でのAAでは数値目標が定められているため優遇型AAと見做していたが、数値目標はあくまで基準値であり、そこからマイノリティ労働者の不在、不足を見極め、バリアを発見、除去する同様の手法を用いていることが明らかになった。そのため、障害分野とそれ以外の分野のバリア分析アプローチは、同視できるのかどうか、バリア分析と合理的配慮の差別禁止法理における理論的な位置づけに関する先行研究の有無を調べているところである。
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