今年度は、「デジタル化の進展によって生じる集団的労使関係法の変容を考察する」という目的を実現するための研究作業として、当該問題に関わるドイツ法の法令、判例、学説の分析を元にして、日本法における関連領域の検討作業を進めた。 また、昨年度に引き続き、連合総研「『理解・共感・参加を推進する労働組合の未来』に関する調査研究に参加し、労働問題に関する研究者との研究会や組合関係者との検討会を重ね、成果を公表した。 成果では、日本の労働組合法の母法とされるドイツ法では、労働組合が労働者をできるだけ包摂するよう、あるいは交渉単位内の労働者を公正に代表するよう労働組合に働きかける労働法上の制度や法理が存在しており、しかも、こうした制度や法理の中には、集団的労使関係の前提となる社会・経済状況の変化に対応するべく、その時々の状況に応じて柔軟に変更が加えられているものもあり 、労働組合や労使関係に対する労働法の積極的な姿勢はより一層明確であるという比較法的検討から得られた問題認識の下、原稿の社会状況下で、日本の主流をなす企業別組合にはどのような将来像を目指すことが求められ、そのためには労働法からのいかなる法的支援・手当てが可能かということを論じた。そのうえで、「職場全体の公正な代表」となることが選択肢のひとつとしてありうるとして、団結、団体行動、労働協約、争議行為の各段階で、企業別組合が職場全体の公正な代表となることを後押しするための法解釈を、これまでの学説上の議論も踏まえながら検討した。
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