個別のニーズに応じた所得保障制度という考え方は十分に定着しており、それぞれに合理性があることも理解されている。ただしこれはニーズの把握やケースの分別が理性的におこなわれることを前提としているため、制度にスティグマがかかったり、あるいは大規模災害のときにおけるようにそもそもニーズを捕捉するシステムが機能しなかったりする場合、その本来のメリットを生かし切れないことになる。たとえばベーシックインカムのような、おそらく従来の社会保障法理論上はネガティブに捉えられることの多い考え方も、新たな視点として、その普遍性を行かす方向で社会保障法学の課題として捉えていくことも不可能ではないだろう。
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