研究課題/領域番号 |
19K13535
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
堀田 尚徳 広島大学, 法務研究科, 准教授 (70779579)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 勾留 / 勾留理由開示 / 予備審問 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アメリカの予備審問が有する諸機能のうち、身体拘束の根拠となった資料の開示に関わる証拠開示機能 (discovery) の内容を調査することにより、身体拘束の根拠となった資料の開示が、いかなる考えに基づいて実際にどのようになされているのかを解明し、日本の勾留理由開示制度に関する解釈論を提示するための示唆を得ることにある。 研究初年度である令和元年度は、証拠開示機能を中心とした予備審問の歴史的発展過程の解明に取り組んだ。具体的には、以下の2点を重点的に行った。 第1に、証拠開示機能が現れた理由及び経緯の解明である。予備審問に証拠開示機能が付与されるに至ったということは、証拠開示機能が必要とされる事態が生じたということである。そこで、予備審問の制度発足時に遡って、できるだけ幅広く体系書、研究書、立法資料等の文献を収集し、分析した。 第2に、証拠開示機能と他の機能との関係の解明である。予備審問の機能には、証拠開示機能の他に、審査機能 (screening)、証言の証拠保全機能 (perpetuation of testimony)、公判前の釈放機能 (pretrial release) 等があることを確認できている。本研究の目的をふまえると、証拠開示機能についての文献のみを収集し、分析すれば足りるとも思える。しかし、これらの諸機能が現れるまでには沿革があり、その沿革の中で証拠開示機能がどのように位置付けられてきたのかを分析することで、証拠開示機能の特徴が明らかになる。そこで、証拠開示機能以外の諸機能についての文献も収集し、分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、証拠開示機能を中心とした予備審問の歴史的発展過程について、一定量の文献を収集し、分析することができた。他方で、収集した文献の一部について、翻訳及び分析を完了することができなかった。もっとも、このような事態は、当初の研究計画策定段階において想定していた範囲内に止まっているため、令和2年度の前半まで作業を継続することで、完了できる予定である。そこで、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度前半は、令和元年度の作業の残りについて、完了することを目指す。 令和2年度後半は、現在の予備審問における証拠開示機能の内容の解明に取り組む。具体的には、現在の予備審問における証拠開示機能の位置付けを整理すると共に、アメリカの学説及び裁判例においてどのような問題点が議論されてきたのかについて、文献を収集し、分析する。 令和3年度は、前年度までに行った分析結果を取りまとめた上で、研究会において研究報告を行うと共に、論文執筆を通じて成果を公表する。 令和元年度に収集した文献の一部について、翻訳及び分析を完了することができなかったこと以外は、研究計画全体に大幅な変更あるいは修正を必要とする事情が無いため、当初の研究計画に沿って研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、書籍の納品が遅れたことに加えて、新型コロナウィルスの影響により、令和元年度末に参加を予定していた研究会が中止になったことに伴い、旅費を支出する必要がなくなったことにある。 繰り越し分は、引き続き、洋書等の書籍の購入費等に充当する予定である。
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