本研究の目的は、アメリカの予備審問が有する諸機能のうち、身体拘束の根拠となった資料の開示に関わる証拠開示機能の内容を調査することにより、資料の開示が、いかなる考えに基づいて実際にどのようになされているのかを解明し、日本の勾留理由開示制度(刑事訴訟法207条1項、同法82条以下)に関する解釈論を提示するための示唆を得ることにある。 起訴前段階における被疑者の身体拘束期間は最長約4週間にも及ぶ(同法203条、205条、208条等)。そのため、被疑者は、不当に長い身体拘束により行動の自由を奪われるのみならず、職を失う等の社会的な不利益を被る可能性がある。このような法制度下においては、不当に長い身体拘束から被疑者を解放するための諸制度を十分に活用できることが極めて重要であり、そのためには、被疑者及び弁護人が捜査機関側の有する身体拘束の根拠となった資料の内容を知る手段を有することが必要不可欠である。しかし、現行刑事訴訟法においてそのような手段を明示的に定めた規定は存在しない。そこで、解釈により上記手段を認めることで、不当に長い身体拘束から被疑者を解放するための諸制度を十分に活用できていないという問題を解決する必要がある。 身体拘束の根拠となった資料の内容を知る手段として、勾留理由開示制度の利用が考えられるところ、同制度を資料の内容を知る手段として位置付ける解釈論を提示するためには、資料が被疑者及び弁護人に開示される制度を有する国における議論から示唆を得る必要がある。そこで、現行刑事訴訟法の制定過程において勾留理由開示制度に一定の影響を与え、かつ、資料が被疑者及び弁護人に開示されるアメリカの予備審問に関する議論を参照することにした。 本年度は、前年度まで継続してきた研究を基に、予備審問に関する議論を勾留理由開示制度にどのように取り入れるかについて検討を深めた。
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