研究課題/領域番号 |
19K13539
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
渡辺 由希 淑徳大学, 総合福祉学部, 講師 (30738696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 知的障害者 / 被疑者面接法 / 法心理学 |
研究実績の概要 |
当該年度は模擬実験によるデータ収集を行う予定であったが、後述の理由により遅れが発生している。そのため、すでに手元にある取調べ逐語記録の分析を行った。 これまでの先行研究では、知的障害者のコミュニケーションの特徴について、次のことが明らかになっている。(1)知的障害者は一般的に質問形式に影響を受けやすい(Perlmanら, 1994)。例えば自由回想や包括的な質問の正答率は高いが、短く答える質問や、陳述形式の質問は、正答率が低いことが明らかにされた。 また村山(2001)より、(2)質問の如何にかかわらず、迎合的に「はい」と答えてしまう傾向があること、(3)質問が理解できない場合でも、自分にわかるように質問を解釈し直して、それに答えることがあることが明らかにされた。一方、実務レベルでは、次のようなコミュニケーション特徴があった場合には知的障害によりコミュニケーション能力等に問題があると判断された。(A)話す速度が遅い、(B)質問されてから答えるまでに時間がかかる、(C)漢字が読めない(簡単な漢字しか読めない)、(D)返答が単語や2、3語に限られ長い文章で話せない、(E)質問の中の言葉をおうむ返しで使う、(F)『なぜ』、『どうして』という質問が理解できず、混乱したり戸惑った様子を見せる、などである。 これらを踏まえて、当該年度は、知的障害者が被疑者となった事例を用いて、取調べの逐語記録の分析を試みた。その結果、被尋問者(知的障害者)が質問からずれた応答をした際でも、取調官(警察官)がそれを訂正せず、話し手の語りを促すような発話をしていたことが明らかとなった。 このことは、質問の仕方を洗練させていったとしても、それに対する応答のずれを”流す”構造となっている。事実の吟味が重要となる被疑者取調べにおいて、こうしたコミュニケーション構造は不適切であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は模擬実験データを収集する予定であったが、コロナ禍による衛生管理体制の厳格化により、知的障害者施設でのデータ収集は困難であった。よって、すでに手元にあるデータの分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の状況にもよるが、データ収集は来年度行うものとし、分析や研究成果の発表のため、1年の延長を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集のための謝金等を支払う予定であったが、コロナ禍のため当該年度の実施が困難であったため。
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