研究課題/領域番号 |
19K13539
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
渡辺 由希 淑徳大学, 総合福祉学部, 講師 (30738696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 法心理学 / 被疑者面接法 / 知的障害者 |
研究実績の概要 |
当該年度も引き続き、コロナ禍による衛生管理体制の厳格化により、データの収集が困難であった。そのため、昨年度実施した知的障害者が被疑者となった取調べの逐語記録の結果と、日本型取調べの構造とを比較検討した。 渡辺ら(2016)によれば、日本型取調べ構造の特徴は基本的にアメリカのReidテクニックに近いが、日本独自の特徴も備えている。Reidテクニックの特徴として、被疑者を有罪と確証した上での取調べであること、またそれにより自白獲得を目指すことが挙げられる。日本型取調べ構造は、そのような「確証型の取調べ」である点に加え、日本独自の特徴である「倫理面の重視」が存在する。これは被疑者に体験者として相応の態度を求めるものであり、(a)取調官による代弁、および(b)反省・悔悟の態度の要求がその具体的な態度内容となる。(a)は例えば、「辛かったんだろう?」などと取調官が被疑者の気持ちを代弁し、取調官は被疑者のことを理解する人物であることを示す態度である。(b)は、「嘘は言っちゃダメなんだよ」などと悪いことをしたのならば反省すべきという態度を要求するものである。こうした特徴が絡み合いながら取調べが進行するが、その背景にはパターナルな関係性の存在が示唆されている。 一方、知的障害者の被疑者取調べの特徴として明らかとなったのは、被尋問者(知的障害者)が質問からずれた応答をした際でも、取調官(警察官)がそれを訂正せず、話し手の語りを促すような発話をしていたことであった。このことは一見するとパターナルな関係性構築は行われていないように思われるが、語りを促すような発話の後に取調官による供述内容の要約が行われていることから、知的障害者が被疑者となった取調べにおいても、日本型取調べ構造は駆動していたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は得られたデータを分析し、発表する予定であったが、コロナ禍による衛生管理体制の厳格化により、知的障害者施設でのデータ収集に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各施設に研究協力の依頼を行う。データ集まり次第、分析および研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大につき、予定していたデータ収集が行えなかったこと、ならびに国内学会・国際学会がオンライン開催となっており、謝金や旅費交通費として支払う予定だった費用が未使用である。 今後、まずは遅れているデータ収集を早急に行い、謝金を支払う予定である。また、旅費交通費に関しては、引き続き海外渡航が困難な状況が続く場合は書籍やパソコン周辺機器等の物品費に充てるものとする。
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