研究課題/領域番号 |
19K13542
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐藤 輝幸 法政大学, 法学部, 准教授 (50733185)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 危険犯 / 具体的危険 / 放火罪 / 公共危険犯 / 遺棄罪 |
研究実績の概要 |
本研究では,刑法における「危険」概念に関して,現在特に社会問題となっている犯罪現象・犯罪類型を取り上げ,個別の犯罪類型における「危険」の意義・内容および判断基準を個別要件の解釈論として,各論的に展開し,明確化することを目的として設定した。 研究2年目である2020年度は,この目的を達成するための基礎的な調査のため,日本法および比較法研究を行い,いくつかの犯罪類型における「危険」の捉え方を調査した。 比較法研究としては,具体的危険犯における「危険」の判断基準を中心に調査,研究を行った。具体的な犯罪としては,「スイス刑法における『生命の危険』について―危険判断における考慮要素抽出の素材として―」法学志林118巻4号を執筆し,スイスにおける生命に対する危殆化罪(スイス刑法129条)および強盗罪による生命の危殆化(同140条4項)をめぐる判例および学説を紹介し,それによって,危険の「程度」および「意味」が犯罪によって異なる可能性があることを指摘した。 日本法については,不能犯,遺棄罪および文書偽造罪の研究を中心に,判例および文献の基礎的な調査を行った。 また,放火罪についてのこれまでの研究成果を踏まえ,佐伯仁志=橋爪隆編『刑法判例百選II各論』(第8版,有斐閣)に,我が国の放火罪において既遂時期の判断基準となる「焼損」概念についての重要判例である最判昭和25年5月25日刑集4巻5号854頁を中心に,主として学生・一般を念頭に解説を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個人的な事情として,持病の手術を行い,約2か月間の入院とが必要となったことが挙げられる。さらに,それによる服薬の影響で,易感染の状況となり,新型コロナウイルス流行と相まって,直接対面での研究会を行うことや図書館等で資料収集を行うことができなくなった。これらにより,調査および研究に遅れが生じている。 他方で,すでに研究を進めていた放火罪の研究や,購入可能な資料やインターネット上で収集可能な資料を利用することが可能なスイス刑法については,あまり遅れなく研究を進めることができた。 総合すると,当初の研究計画よりもやや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点では,当初の研究計画よりも若干の遅れがあるが,基礎調査については,これまで同様地道な調査を行う。他方で,研究成果の発表については,予定より対象犯罪を限定し,不能犯,遺棄罪,文書偽造罪を中心に執筆を進めていくことを検討している。 また,コロナウイルスにより,資料調査,研究会,インタビュー調査等が行いにくい状況にあるが,インターネットで入手可能な資料の収集・分析とウェブ会議システム等を利用し,できるだけ研究の質が維持できるようにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
入院治療により,研究できない期間があったことおよび新型コロナウイルス流行により,研究会参加や資料調査ができなかったため,予定額の支出がなかった。 昨年度研究できなかった部分に関しては,その遅れを取り戻すべく,資料調査のために物品費を使用する予定である。旅費の使用については,感染状況に応じて検討する。
|