研究課題/領域番号 |
19K13542
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐藤 輝幸 法政大学, 法学部, 准教授 (50733185)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 危険犯 / 遺棄罪 / 文書偽造罪 / 未遂犯 / 不能犯 |
研究実績の概要 |
本研究では、刑法における「危険」概念に関して、個別の犯罪類型における「危険」の意義、内容および判断基準を個別要件の解釈論を各論的に展開し、明確化することが目的である。 研究3年目である2021年度は、昨年度に引き続き、この目標を達成する基礎的な研究として、いくつかの犯罪類型において日本法および比較法研究を行うとともに、これまでの研究を踏まえて危険概念に関する論文の執筆に取り組んだ。 比較法調査としては、危険概念に関する一般論に関する文献講読に加えて、本研究の主たる目的である個別的な検討として、未遂犯および遺棄罪について、ドイツ法およびオーストリア法についての基礎的な判例・文献の調査を行った。 日本法の研究としては、未遂犯、遺棄罪および文書偽造罪の判例および文献の基礎的な調査・研究を行った。このうち、文書偽造罪については、調査を踏まえて、松原芳博編『続・刑法の判例』(現在校正中であり、2022年度に刊行される予定である)において、偽造概念に関する重要判例である最決平成15年10月6日刑集57巻9号987頁を素材に、文書の受領者の一般的な思考を追体験するという方法により、作成名義を偽ることがなぜ文書の信用の危殆化につながるのかという観点から、保護に値する信用を危険にさらす偽りが何かを分析し、私文書偽造罪の本質と偽造概念について検討を加えた。 また、遺棄罪については、未だ脱稿まで至っていないものの、これまでの判例・学説の現状分析について、これまで行ってきた研究をまとめ、解説を執筆しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の手術による研究の遅れがなお残されたままであることに加え、新型コロナウイルスの流行が収束しなかったことによる資料収集および対面での研究会が困難であるため、当初の計画から遅れが生じている主たる原因である。 他方で、そのような制約はあるものの、これまでに収集していた資料の調査およびこれまでの研究内容を論文化する作業を進めることはできた。 総合すると、当初の研究計画よりもやや遅れが生じているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究に若干の遅れが出ているものの、計画最終年度であり、研究成果を論文として公表すべく、執筆を進めていきたい。依然として新型コロナウイルスの流行が収束せず、資料調査、研究会、インタビュー調査等が行いにくい状況にあるが、インターネットで入手可能な資料の収集・分析とウェブ会議システム等を利用し、できるだけ研究の質が維持するとともに、これまでの蓄積を反映できる分野に集中して論文執筆を行うことで、対面での研究会の必要性や新たな資料収集を減らし、新型コロナウイルス流行の影響を抑えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度以降、新型コロナウイルスの流行により、予定していた対面の研究会、資料収集および海外のインタビュー調査を行うことができなかったことによる旅費の支出がなかったこと、ならびに、それに対応して、必要文献の収集が不十分となり、物品費の使用も減少したことによる。 次年度においては、大学図書館や海外研究中の知人等を通じて複写や購入の依頼を利用して資料の入手に努めるほか、新型コロナウイルスの流行状況によるが、対面による調査等が可能であれば昨年度までに予定していた調査を行いたい。また、そのような調査が困難な場合には余剰の旅費相当額については返納する。
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