研究課題/領域番号 |
19K13543
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
伊藤 嘉亮 広島修道大学, 法学部, 准教授 (00837792)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テロ等準備罪 / 共謀罪 / 共謀 |
研究実績の概要 |
テロ等準備罪(共謀罪)における「共謀」を本格的に研究する前提として、共同正犯(刑法60条)に関する研究を進めた。現在は、すべての共同正犯を統一的に理解する立場が、実務においても、学説においても有力となっているが、刑法60条が対象とする事案には多種多様なものが含まれており、それらすべてを包括しうる基準はどうしても抽象的にならざるを得ない。そのような包括的・抽象的な基準では、事案を解決するための具体的指針たり得ないため、共同正犯を事案類型ごとに整理し、それぞれの要件を提示した上で、各事案を多面的に考察するべきことを主張する論文を執筆した。 以上の類型論の立場から見ると、共同正犯の共謀(意思連絡)の中にはかなり緊密なものから、直接対面したことはなく、インターネット等を介して自動応答でやり取りしたに過ぎない希薄なものまで含まれていることになる。この点、一般的に、テロ等準備罪における「共謀」は、共同正犯における共謀(意思連絡)と同義であると解されてはいるが、テロ等準備罪の中核たる「共謀」を希薄なものと捉えることは妥当でないため、比較対象となる共同正犯の事案類型は自ずと限定されてくると推測できる。具体的にどういった「共謀」がテロ等準備罪の成立に求められるのかを明らかにするには、本罪と比較されうる共同正犯の「共謀」がどういった事案で、どういった間接事実をもとに認定されてきたのかを整理・分析する必要がある。今後は、この方向性で裁判例を分析することで、有益な視座を得ることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年4月に現在の大学に着任したが、コロナの影響で全面的にオンライン上で授業しなければならなかったため、その準備や対応にほとんどの時間を割いてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、テロ等準備罪と比較しうる共同正犯の事案類型がどういったものなのかを整理・分析し、第二に、そこでの「共謀」がどういったプロセスで認定されているのかを調査することで、テロ等準備罪における「共謀」としてどのような内容のものが想定されるのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は現在の所属大学での授業準備(コロナ禍でのオンライン授業の準備)に追われ、研究に時間を回すことができなかった。その分を2022年度に回した。 海外への渡航も徐々に可能にはなってきているが、引き続き予断を許さない状況ではあるので、海外への研究出張は予定しない。その代わりに関連する国内外のテキストや研究書などを購入したり、あるいはZoomなどを通じたオンライン研究会も継続して行われるので、PCの周辺機器などを購入したりすることで、研究に役立てることにする。
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