テロ等準備罪の共謀も、共同正犯の共謀も多義的な概念であり、関係者間の緊密な意思疎通を意味することもあれば、互いの行動を認識し合う程度の希薄な意思疎通を意味するに過ぎないこともある。近時、共同正犯の共謀をめぐっては、インターネットを通じた希薄な意思疎通でも共謀共同正犯は基礎づけられるとの理解が一般化しつつあるが、こうした解釈にはテロ等準備罪の成立範囲を拡張させてしまうリスクがある。テロ等準備罪を謙抑的に解釈し、その成立範囲を適切なものにとどめるには、まずもって共同正犯の共謀概念を解明し、どのレベルの共謀が本罪の成立に必要なのかを明らかにすべきであって、この問題意識を共有しなければならない。
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