本年度は、主にこれまでの研究の継続と、研究期間全体の成果公表を行った。 第1に、文献によるグッドライフモデルの理論的検討を行った。とりわけ、近年の犯罪学における離脱理論(Desistance theory)を中心に文献を検討した。 第2に、当事者に対する聞き取り調査と共同での研究会を実施した。主に、受刑者や出所者を支援するNPO法人等と協力し、出所者に対する生活状況の聞き取りや共同での研究会を行い、実際の社会復帰上の様々な困難について検討した。 第3に、上記および研究期間全体を通じて得られた成果を論文等によって公表した。 相澤育郎「犯罪学における離脱研究の展開と論点」(『刑事司法と社会的援助の交錯』所収)では、近年の犯罪学における離脱理論の展開と主たる論点について整理し、犯罪からの立ち直りのプロセスをめぐる研究動向を明らかにした。大江將貴=齋藤尭仁=相澤育郎=我藤諭=竹中祐二「国際自己申告非行調査(ISRD)日本版データに基づいた実証研究」では、日本の中学生を対象に実施した自己申告非行調査のデータを用い、グッドライフモデルの仮説検証を行った。本研究からは、日本における当該モデルの応用可能性について示唆が得られた。そのほか、関連する成果として、相澤育郎「最高裁令和1年8月9日判決」では、日本における死刑確定者処遇に関する判例の分析を行い、相澤育郎「フランスの修復的司法」では、フランスにおける「修復的司法措置」の日本法への示唆を検討した。 本研究課題におけるグッドライフモデル理論の解明と日本への応用可能性という研究目的との関連では、本年度の成果公表はこれに資するものである。また当初から1年延長したが「研究実施計画」との関連では、最終年度として一定の成果を挙げることができた。なお英語論文の公表が予定されていたが、現在英文校閲が終了した段階であり、改稿の後投稿の予定である。
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