従来から「利益吐き出し」法理の必要性は説かれ、一定の議論の蓄積は見られたものの、この問題領域の横断的な研究は十分にはなされてこなかった。その中で本研究は、包括的な研究を行い、従来の議論では一元的な根拠づけを所与の前提となりつつあった根拠論について多元的な根拠論を指摘し、かつ(90年代後半から既に存在していたものの)従来の議論では注目されることがなかった特定履行救済として利益吐き出しを説く見解について注目し、わが国の今後の利益吐き出しの議論の底上げを図った。また、人格的権利との関係では、自由な譲渡性を制限しつつも、侵害された場合の利益吐き出しの根拠づけも試みた点は社会的意義もあると考える。
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