主に日本の上場会社を対象とする実証分析を通して、会社法における取締役会の在り方に関して日本法が抱える課題を明らかにしようとすることを念頭に本研究を開始した。 初年度である2019年度においては、いくつかの具体的な研究テーマの中で、基礎的な研究として、企業価値に影響を与える要因を明確化することをまず試みた。この過程において、"Managerial Ownership and Firm Value: Evidence from Japan"と題する論稿を執筆した。当該論稿は、経営者による株式保有とTobin's qを代理変数とする企業価値との間にどのような関係が観察されるかを実証的に明らかにしたものである。具体的には、①アメリカの上場会社を対象とした最近の代表的な先行研究と異なり、日本の上場会社においては経営者による株式保有と企業価値との間に正の関係が観察されること、②これは主に上場後の年数があまり経過していない若い会社によるものであること、③IPO後に観察される経営者による株式保有の幅広い低下についてはアメリカと日本で類似していること、等を明らかにしている。 当該論稿については、日本経済学会2020年度春季大会、日本ファイナンス学会第28回大会、AFFI (French Finance Association) 37th International Conference、ALEA (American Law and Economics Association) 30th Annual Meeting、EFMA (European Financial Management Association) 2020 Annual Meetingでの報告に採択されたが、AFFIおよびEFMAについては採択後に当該研究集会の開催が中止された。
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