本年度は、研究課題を行う上で必要となる公開買付規制の研究について、「公開買付規制を適用する会社の範囲の検討」『企業法制の将来展望(2023年度版)』という論文を公表した。公開買付規制は、上場会社だけでなく有価証券報告書提出会社一般に適用されるが、その当否を検討し、現行法の立場にも合理性が認められることが分かった。また、組織再編においては公開買付けを前置する形をとることも多いが、そのような組織再編の差止めを含む事前の救済について、組織再編を専門とする弁護士とともに研究を行い、「公開買付けを伴うM&Aにおける事前の是正・救済」商事2311号65頁として公表した。 研究期間全体を通じて、次のような成果を得た。研究課題を行う上で前提となる公開買付規制の検討について、全体の見通しを示す論文(「公開買付規制の総合的検討―序論」『企業法制の将来展望(2022年度版)』)を公表し、各論的な問題を扱う研究を行うこともできた。各論的な論文としては、「公開買付規制における形式基準の特別関係者」『企業法制の将来展望(2020年度版)』、「公開買付規制を適用する会社の範囲の検討」『企業法制の将来展望(2023年度版)』がある。 組織再編の差止めについては、会社法上の組織再編の差止めを検討する際の分析の視点を構築することができ、「組織再編の差止めの訴え(1)」法学協会雑誌137巻2号161頁において公表した。また、上述の通り、組織再編を行う際には公開買付を前置することも多いが、そのような公開買付けの差止めについても研究を行った。「組織再編の差止めの訴え(1)」の分析を応用して「公開買付けの差止め」『企業法制の将来展望(2019年度版)』を執筆を行った。より実務の実体を踏まえて公開買付けの事前の救済について検討したのが、前述の「公開買付けを伴うM&Aにおける事前の是正・救済」である。
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