研究課題
本研究は、司法制度改革において提示された「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割」が、現在どれほど果たされているか、その後の社会の変化に対してどのような対応がされてきたか、あるいは今後どのように対応すべきかについて、なるべく幅広く検討することを目的としている。2020年度における研究のうち最も重要と思われる成果は次の通りである。司法制度改革審議会意見書においては、「国際商事仲裁を含む仲裁法制を早期に整備すべき」旨が指摘されていたところ、これを受けて2003年に、UNCITRALモデル法を範にして仲裁法が制定された。もっとも、その後の2006年にUNCITRALがモデル法を改正し、仲裁廷の発令した暫定保全措置の国内での執行を認める規定を設けるに至った。我が国の仲裁法は、この改正モデル法に対応していない状態が長らく続いていたが、今般、法制審議会仲裁法制部会において、仲裁廷の発令した暫定保全措置の執行等に関する規定を整備する方向で検討が進められているところである。このような現状に鑑みて、仲裁廷の発令した暫定保全措置の執行可能性に関するドイツの状況について調査・研究を行い、これを紹介・検討する論文を公表した。ドイツにおいては、仲裁廷の発令した暫定保全措置の国内での執行を認める規定が存在し、また、同規定に関する下級審の裁判例も複数存在していたため、我が国における立法論ないし立法がされた後の我が国の裁判所における法実践の参考になることが期待される。なお、当初の計画では仲裁法の研究を行う予定はなかったため、研究計画に修正が加わるかたちとなったが、時宜を得た研究をすることができ、また、結果として長期的に有意な視点(民事裁判手続の意義・限界や仲裁・ADRとの役割分担など)を獲得することができたと考えている。
3: やや遅れている
研究計画の修正により、当初計画していた研究を十分に進めることができなかったため、このような評価をした。
次年度は、公益を保護・実現する司法部門の役割に関する考察と面会交流債務の強制執行に関する調査・研究に時間を充てることを計画している。それぞれについて、研究会報告及び論文公表を行う予定である。
新型コロナウイルスの影響により、旅費の使用がなかったことが主たる理由である。次年度は、研究計画の実施のために、主として物品費に充てていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件)
酒井一編『国際的権利保護制度の構築』
巻: - ページ: 317-344
巻: - ページ: 27-62
別冊NBL No.172 仲裁法制の見直しを中心とした研究会報告書
巻: - ページ: 259-267
巻: - ページ: 229-235
Joan Pico i Junoy (dir.), Juan Antonio Andino Lopez (coord.), Elisabet Cerrato Guri (coord.) "La prueba pericial a examen"
巻: - ページ: 187-226