研究課題/領域番号 |
19K13569
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
齋藤 航 香川大学, 法学部, 准教授 (00803975)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 過失相殺 / 損賠賠償 / 契約 |
研究実績の概要 |
2020年度は、前年度までの研究を継続し、その成果として2編の論文を刊行した。第一が「不法行為における被害者の過失に基づく損害賠償額の減額方法―comparative negligence と avoidable consequence の適用関係―」香川法学40巻1・2号109-144頁(2020年9月)、第二が「民法418条の類推適用に関する類型的考察」香川法学40巻3・4号139-164頁(2021年3月)である。 前者は、アメリカ法における損害賠償額の減額方法としてcomparative negligenceによる減額(割合的減額)とavoidable consequenceによる減額(部分的減額)があることを指摘し、これらはどのように使い分けられているかを検討するものである。結論として、アメリカ法においては、具体的な損害項目を特定してその分を減額する部分的減額が優先的に用いられていると分析し、日本の判例においても同様の例がみられることを踏まえて「部分的減額優先の原則」があることを主張した。 後者は、民法418条の類推適用がなされる事例を、裁判例を網羅的に検討することを通じて類型化し、それらでなぜ類推適用がなされているのかを検討した。結論として、これまでの研究を踏まえ、契約という観点からこれらの類推適用の妥当性を判断すべきであり、一部適切ではないと思われる事例があることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度までの研究により、計画していたアメリカ法との比較による契約違反の過失相殺の分析については、ほぼ研究を完了することができた。 他方、新型コロナウイルスの影響で海外渡航が事実上不可能になったことで、海外出張をしての資料収集を行うことができなかったため、翌年度に再度海外出張の可能性を検討することとする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新型コロナウイルスの影響を注視しつつ海外出張による資料収集の可能性を模索する。これが困難な場合には、過失相殺との関係におけるドイツ法の研究を行う予定である。これまで得ることが出来たアメリカ法の知見を踏まえてドイツ法を検討することで、より相対的な観点から日本の過失相殺を捉えることができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、海外出張が事実上不可能になったこと、また学会や研究会等が中止あるいはオンライン開催となり、首都圏や関西圏への出張が全くなくなったことにより、資料収集や学会等への参加のための旅費に関する支出が一切なかったことが理由である。 次年度は、感染状況を注視しつつ、出張の可能性を探るとともに、出張が困難な状況が続くようであれば、追加の研究の物品購入を行う予定である。
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