研究課題/領域番号 |
19K13571
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加藤 甲斐斗 早稲田大学, 大学院法務研究科, 任期付講師 (60823680)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 非典型担保権 / 倒産手続 / 法形式 / 法律構成 / 担保としての経済的実質 / 倒産法的変容 |
研究実績の概要 |
申請者は、非典型担保の法形式および法律構成が、当該非典型担保の倒産手続上の処遇との関係でどのような意味を持ち得るのかという問題意識に基づき、各種非典型担保の法律構成や法形式が倒産手続との関係でそれぞれ修正、変容を受ける理論的根拠、および倒産手続における各種非典型担保の処遇のあり方といった問題を研究テーマとして、各種非典型担保の類型ごとに検討を進めている。かかる非典型担保権の1類型である、所有権留保の倒産手続における処遇については、最高裁平成22年6月4日判決(民集64巻4号1107号)が、留保売主による別除権としての権利行使が認められるためには、倒産手続開始の時点で「登記、登録等」を具備していることが必要である旨を判示したことを契機として、所有権留保の実体法的法律構成や物権変動の有無、最高裁判決が具備を要求する「登記、登録等」の内容(対抗要件か、権利保護資格要件か)、さらには、「登記、登録等」を要求することの正当化根拠等を巡り、多くの議論が生じているところであり、民法および倒産法の両分野から様々な見解が示されてきたところである。そこで、本年度は、所有権留保の法律構成、および物権変動についてどのように観念するかという点を中心に、実体法上の議論を分析した上で、それを前提に、倒産手続との関係で、「登記、登録等」が要求されることをどのように理論的に正当化すべきか、という点を中心に検討を行い、倒産手続が所有権留保の実体的法律構成にどのような影響を与えうるか、につき一定の結論を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
担保法制に関する改正を契機として、担保権の処遇に関する文献が大幅に増加したため。 また、COVID-19及び大学等のロックアウトを理由として、指導教員との十分な議論、検討、あるいは一定の重要な資料に事由にアクセスすることができなかったためである。
|
今後の研究の推進方策 |
先に述べた、所有権留保の倒産手続における処遇に関し、申請者は、所有権留保は留保買主の倒産手続開始決定を契機として、その法的評価が変容することを示した(以下、便宜上「評価変容説」という。)。かかる倒産時評価変容説は、平時と倒産時における「担保」の法的評価に差異が生ずる余地を許容するものであるが、平時、そして倒産時における「担保」の定義及びその該当性を判断するための要件、要素についても、今後明らかにしていく予定である。さらに、倒産手続が開始された段階で債権者の権利や契約の内容を変更する理論的根拠として既に「倒産法的公序」が主張されているところ、かかる理論との関係性についても今後明らかにしていく予定である。 さらに、他の非典型担保権の倒産手続上の処遇の検討については、別除権該当性の判断に際し、非典型担保権の法律構成、法形式がどのような意味を持つか、また、米国連邦倒産手続の「適切な保護」の文脈において、非典型担保権の法律構成や法形式がいかなる意味を持つのか、についても本年度中に一定の考察を行い、その結果を論文という形式で公表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による影響で、在宅勤務を余儀なくされ、論文作成のために必要な資料を購入う・保管することが困難であったため。 次年度使用額に係る助成金及び翌年度分の助成金については、平時、そして倒産時における「担保」の定義及びその該当性を判断するための要件、要素の検討や別除権該当性の判断に際し、非典型担保権の法律構成、法形式がどのような意味を持つか、また、米国連邦倒産手続の「適切な保護」の文脈において、非典型担保権の法律構成や法形式がいかなる意味を持つのか、といった申請者の論文のテーマを構成する部分を検討、考察するための各種資料の購入費・印刷費として使用する予定である。
|