研究課題/領域番号 |
19K13571
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
加藤 甲斐斗 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (60823680)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非典型担保権 / 法律構成 / 法形式 / 担保としての実質 / 倒産手続 |
研究実績の概要 |
譲渡担保権や留保所有権が譲渡担保設定者や留保売主の倒産手続との関係で別除権あるいは更生担保権に該当するか、取戻権に該当するのかという問題は、かつて倒産財団帰属性要件(「破産財団に属する」、「再生債務者の財産に属する」)の充足如何の問題として理解されてきた。そのため、従来は、譲渡担保権や留保所有権の法律構成(例えば、譲渡担保権者側に完全な所有権の移転を肯定する所有権的構成)や法形式(所有権の在所)を意識しつつ、これらが別除権や更生担保権に該当するのかを検討してきたところである。ところが、近年では、譲渡担保権や所有権留保について、譲渡担保権者や留保売主側に譲渡担保財産や留保目的物の所有権が完全に移転ないし帰属することを肯定する所有権的構成の立場を採用しつつ、譲渡担保権や留保所有権が別除権、更生担保権に該当することを示唆する見解も提唱されるに至っている。つまり、別除権や取戻権を峻別する倒産財団帰属性要件が本当に要件として必要であるのか、また、必要であるとしてどのようにこれを解するべきであるのか、混線した状況にあるといえる。 そこで、申請者は、倒産財団帰属性要件が従来の諸議論においてどのように理解されてきたのか、その沿革等を踏まえつつ、① 倒産財団帰属性要件の要否、② 同要件を必要とする場合において同要件をいかに解釈すべきか、③ 同要件の解釈において譲渡担保権や所有権留保の法律構成や法形式はどのような意義を有するのか、一定の私見を展開した。その結果は、本学紀要において公表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスのため各種文献等へのアクセスを不十分に行うことができなかったことが大きい。また、本研究にかかわる既存の資料のみならず、担保法制の改正に伴い部会資料や中間試案に対する意見書等についても更なる分析、検討をする必要が生じたためである。
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今後の研究の推進方策 |
各種非典型担保権の法律構成や法形式が譲渡担保設定者や留保買主の倒産手続との関係でいかなる意義を有するのか、例えば、譲渡担保権の法律構成如何(所有権的構成か、担保的構成か、さらに担保的構成であるとしていかなる見解に与するのか)によって、譲渡担保権の別除権該当性は左右されるのかという問題に関して、引き続き分析、検討を行う。 申請者は、各種非典型担保権の法律構成と法形式と当該非典型担保権の別除権該当性の問題及びこれらの担保権に対する担保権実行中止命令や担保権消滅許可請求の時的限界については検討済みであり、前者については公表済みであり、後者に関しても次号の本学紀要にて公表予定である。 したがって、推進方策としては、まず、集合動産譲渡担保や集合債権譲渡担保を対象として、譲渡担保設定者について倒産手続が開始した場合、管財人や再生債務者が獲得した債権や動産が譲渡担保権の対象となるか否かについて、上記各譲渡担保権の実体的法律構成(例えば、集合物論や分析論)が倒産手続との関係でいかなる意義を有するのかという問題意識を踏まえつつ、一定の分析、検討を試みる予定である。 さらに、申請者は、譲渡担保権や留保所有権等の各種非湛慶担保権の実体的法律構成や法形式が倒産手続との関係では看過ないし修正することを肯定する見解に与するものであるが、何故、このような修正等が許容されうるのか、一定の私見を展開しつつ、各種非典型担保権の倒産手続上の処遇に関して統一的な理論体系の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナウイルス等の蔓延や担保法制の改正に伴い研究計画に練り直しが生ずる等、研究活動に遅れが生じたためである。 請求した助成金の使用計画については以下の通りである。まず、2023年9月までに集合動産譲渡担保権や集合債権譲渡担保権に関する最新文献やFloatingLienに関するアメリカ法の文献等を購入する予定である。購入した各種文献をもって集合動産譲渡担保権と倒産手続に関する論説を執筆し、公表する予定である。また、2023年9月以降は、各種非典型担保権の法律構成や法形式が倒産手続との関係で軽視ないし修正を受ける根拠としての正当化根拠を理解すべく、我が国の破産法、和議法の成立に関する古書や米国連邦倒産法の制定過程に関する各種文献を購入する予定である。
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