研究課題/領域番号 |
19K13575
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 尊明 同志社女子大学, 現代社会学部, 助教 (50739638)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民事法学 / フランス法 / 分別の利益 |
研究実績の概要 |
4年計画の初年度にあたった2019年度においては、まず問題状況の整理と基礎的な資料の収集に集中することとなった。そもそも本研究課題の契機となったのが2018年秋の日本学生支援機構による保証人への全額請求問題(分別の利益不告知)であったため、同問題のその後の議論状況及び保証に関する資料の収集が研究の前提として必要であったからである。 この過程において、保証に関する資料の収集にはそれほど困らなかった。我が国においてこれまでに豊富な議論の蓄積があったからである。それに対して、分別の利益に関する資料の収集は思いの外に苦労した。条文上、共同保証人の負担について定める民法456条が、複数当事者の債権債務関係について定める民法427条を準用するという形式を採用している。明文で定められている制度であるため、起草以来、一定の議論が積み重ねられているものと思っていた。しかし、義務負担者が複数存在するならば、その者達の間で負担を分割するという発想がシンプルであるためなのか、細かな点まで含めて検討されているようには思われなかったのである。分別の利益について必ずしも十分な議論がなされていないことについては、他の専門家らが日本学生支援機構の件を論じる中でも指摘されるようになってきており、私の認識で正しいようであることがわかっている。 ただ、検討すべきポイントを明らかにできたという意味で、4年計画の初年度としては十分に議論を整理できたと考えている。具体的には、①分別の利益が抗弁であることの由来、②民法456条が民法427条を準用するという形式を採用した際の議論、③各求償関係といった諸点である。次年度以降においてはこれらの点を中心に研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、2020年2月頃にフランスでの資料調査及び専門家への聞き取り調査を実施する予定であった。しかし、分別の利益に関する我が国の資料に古いものが多く、入手に予想以上の時間がかかったことや高額になったことに手間取ってしまった。その上、フランス行きを決める前になって新型コロナウイルス禍が報じられるようになり、様子を見ざるを得なかった。結果、2019年度におけるフランスでの資料収集は断念せざるを得なかった。 そこで本年度においては、国内での資料収集に注力し、翌年度以降の準備を綿密に行うこととした。結果として、資料費がかさむこととなったが、我が国で収集すべき資料はほぼ渉猟できたのではないかと考えている。 以上から、全体としてはやや遅れているという評価が妥当ではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度中に行えなかったフランスでの資料収集を実施することとしたい。しかし、新型コロナウイルス禍はいまだ終息しておらず、ワクチンが開発されていない状況においては、翌2020年度においても、フランスに渡ることは難しいのではないかと考えている。 そこで、当初聞き取り調査の相手として想定していたフランス人研究者とは、以前よりも密にメール等での連絡を取るようにしている。先方もオンラインでの研究会等が始まっていることもあって、そのような形での聞き取りにも積極的に応じてくれるようになっている。実際、Zoomを活用して双方向でやり取りをすることもできている。これは国内においても同様であるため、まずはオンラインでできることから進めたい。 同時に、研究初年度は問題状況の整理に注力したが、今後はさらにそこから進んで、債権者・主債務者・保証人の三者関係の視点から、個々の利益状況を整理していくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたフランスでの資料収集及び聞き取り調査を行えなかったため、国内での資料収集に切り替えたものの、若干残額が出た。それほど大きな余剰ではないので、翌年度以降の資料収集にあてる予定である。
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