4年計画の最終年度にあたった2022年度においては、保証の周辺領域に関する研究に注力した。すなわち、前年度までの検討によって、我が国と、比較法の対象にとったフランス法における、保証に認められる性質、特に付従性について明らかにしてきた。保証に認められる別個債務性・付従性・随伴性・補充性などの性質のそれぞれにどのような内容が盛られるのか、そもそもどういったものを保証の性質に挙げるのかについて研究を進めてきた。本年度はそれをさらに進めて、保証制度全体における付従性の性質につき、我が国での議論状況の解明に注力した。 残念ながら、最終年度だけでなく、本研究課題はその全体において新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けてしまったため、フランスでの情報収集のための出張や、各種研究会への参加による情報交換等は大幅に断念せざるを得なかった。ただ、オンラインの方法により、非公式の形ではあるものの、研究成果の検証を行うことができた(予算執行上の偏りが生じているが、これは仕方なかったものと考えている)。 とりわけ重要な成果と考えているのは、「分別の利益」が所与の原則ではなく、政策的な観点から認められてきたにすぎないことを明らかにできた点である。ローマ法(ユスティニアヌス新勅法に由来する)以来、共同保証人に認められてきた「分別の利益」は、その端緒において、そもそも当然のものとは理解されておらず、政策的に認められるにすぎないことは、先行研究でも若干言及されてきた。その後、我が国の法制においては複数当事者が関与する場面では権利義務を分割するのは当然であると理解されてきたように思われるが(明治期の議論からの伝統)、諸外国では必ずしもそのようには理解されておらず、我が国の判例法理も同様に理解できる部分が少なくないことが明らかにできた。
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