研究課題/領域番号 |
19K13586
|
研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
内藤 寛子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東アジア研究グループ, 研究員 (90801978)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 権威主義体制 / 中国共産党 / 法治 / 人民法院 / 司法体制改革 / 政法委員会 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、中国共産党の一党体制下にある司法機関である人民法院に注目し、権威主義体制下の政治指導者が「法治」を進める論理とその条件について解明することである。本課題は、現地調査を基にした質的な分析によって上記の研究課題の解明を計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大ならびに第3期目を迎えた習近平政権による統制の強化により、政治学に関連する現地調査を実施することが難しくなってしまった。今年度は、昨年度から継続して、公式発表や二次資料を基に、習近平政権下で司法体制改革がどのように進められているのかという課題(実績①、②)と、習近平政権がなぜ/どのように「法治」や司法を司る政法組織を重視するのかという課題について検討した(実績③)。 特に、後者の研究課題については、2022年10月に開催された第20回党大会でおこなわれた習近平の報告をもとに検討した。習近平による報告の特徴は、「改革開放」志向は低下する一方で国内外の「安全」を重視する姿勢がみられたことであった。そのため、習近平は自身の腹心を政法委員会の成員に登用しており、当該組織に対する命令的指導を強めていることが分かった。
実績①:内藤寛子「第4章習近平政権下における司法体制改革の実施と成否を分ける条件」、日本国際問題研究所編『習近平政権研究』(日本国際問題研究所、2023年) 実績②:内藤寛子「習近平政権下の司法改革――司法責任制の導入とその実態 」、2022年度アジア政経学会秋季大会 2022年11月27日 実績③内藤寛子「習近平政権下における『安全』の確保と重視される政法組織」『「新時代」中国の動静と国際秩序の変容』研究会、URL:https://www.jiia.or.jp/research-report/china-fy2022-03.html
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大および習近平政権による統制の強化を受け、当初予定していた現地調査を行うことが困難になっていることが最大の理由である。当初計画していた1980年代後半の政法委員会の組織改革に関する研究は進められていない。ただし、研究の目的に沿いながら研究課題を一部変更することで、司法体制改革に関するサブナショナルな地域を対象とした比較研究や政法委員会の役割の解明を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である「権威主義体制下の政治指導者が『法治』を推し進める論理と条件を明らかにする」ことは変更せず、現地調査に基づく質的分析を代替する方法論を模索する。具体的には、二次資料を基にしたデータ分析である。政法委員会の名簿や組織史の一部は日本国内やアメリカでも入手可能なことから、それを収集するとともに、政法委員会の各地域ごとの変遷を確認することで、中央政府とのつながりについて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度以前において、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現地調査費用に支出する予定であった予算を利用しなかったため。2022年度後半から、アメリカを中心に現地調査を再開しており、一定額の使用が可能になったが、過去数年分の予算を消化することは難しかった。
|