研究実績の概要 |
本課題の目的は、中国共産党の一党体制下にある司法機関の人民法院に注目し、権威主義体制下の政治指導者が「法治」を進める論理およびその条件について解明することであった。本課題は、現地調査を基にした質的な分析によって上記の研究課題の解明を計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大ならびに3期目を迎えた習近平政権による政治的引き締めの結果、現地調査を実施することが難しくなってしまった。 このような状況のなかで、今年度は二つの取り組みを行った。一つ目の取り組みとして、現地調査を基にした質的な分析以外の方法論の習得である。具体的には、量的分析を用いた先行研究への理解を深め、プログラミング言語Rを用いた内容分析の習得を始めたこと、そして、atlas.tiを用いたミドルサイズの質的データを量的に可視化するための方法論を習得したことである。 二つ目の取り組みは、エクセルを用いた簡単な記述統計とatlas.tiによって、習近平政権下における高級幹部の汚職への取り締まりの特徴を可視化させた(業績①)。この事例から、国家監察委員会の創設によって人民検察院の機能が国家監察委員会に取り込まれたということがわかった。また、人民法院に関しても、国家監察委員会の創設に伴い、審議時間が長期化していた。人民法院内でどのような変化が起こったのかという点については、今後の研究の課題である。
(業績①)Hiroko Naito (2024), "Is Xi Jinping's Authority over the Political Elite Growing?: Focusing on Time and Openness of the Corruption Trial Process" IDE Discussion Paper.
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