研究課題/領域番号 |
19K13591
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
河村 有介 神戸大学, 国際協力研究科, 助教 (00784125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アラブの春 / 社会保障改革 / 中東・北アフリカ / 権威主義体制 / エジプト / チュニジア / ヨルダン |
研究実績の概要 |
本研究は、エジプト、チュニジア、ヨルダンという、中東・北アフリカ地域の3ヶ国を事例として、社会保障制度改革における政治指導者の選択が国民にどのような影響をもたらし、それが権威主義体制にどのような効果をもたらしたのか明らかにすることを目的としている。 二年目である本年度は、昨年度に実施した、事例3ヶ国(エジプト、チュニジア、ヨルダン)の「アラブの春」以降の社会保障政策の動向分析に基づき、比較分析を行なうための理論枠組みの修正・精緻化を試みた。 また、理論枠組みの精緻化と並行して、近年のエジプトにおける社会政策に関する英語論文を2本執筆した。1本は、令和2年1月に施行された年金改革に関するものである。本論文では、今回施行された年金改革法と、ムバーラク政権下で公布されながらも革命後の政治的混乱の中で施行が見送られた年金改革法とを比較し、前回の年金改革が失敗した要因を分析した。本論文は、海外学術誌への掲載を受理されており、令和3年度中の掲載を予定している。もう1本は、公共部門における雇用に関するものである。本論文は、ムバーラク政権下において財政赤字の原因と指摘されながらも、肥大化した公共部門で抜本的な改革が進まなかった要因を分析し、その上でシーシー政権下において労働組合に対する締め付けの強化や新自由主義的な経済改革の進展に伴い、公共部門改革の環境が整いつつあることを指摘した。本論文は、海外学術誌に投稿中であり、令和3年度中の公表を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の結果、海外渡航が極めて困難となり、本年度中に計画していたヨルダン及びチュニジアへの渡航、現地調査を断念した。そのため、今年度中は、日本国内で収集できる資料の分析にとどまり、一次資料の調査(文献調査)やアクター(政策担当者、社会活動家、研究者)に対するインタビュー調査に基づく詳細な事例分析を着手できていないため、上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施できなかった事例3ヶ国での現地フィールドワークの実施を予定している。現地への渡航が可能になった場合には、事例3ヶ国における社会保障政策に関係する一次資料の調査(文献調査)やアクター(政策担当者、社会活動家、研究者)に対するインタビュー調査を行ないたいと考えている。 次年度中に現地への渡航が困難な場合には、日本国内で入手可能な資料を用いて事例分析を進める予定である。また、令和3年度は、本研究計画の最終年度に当たるため、研究の進捗状況に応じて、補助事業期間の延長を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本年度中に実施を予定していた事例3ヶ国における現地フィールドワークのための旅費として確保していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、現地でのフィールドワークを断念した。 未使用額については、来年度の実施を予定している、現地でのフィールドワークに使用したいと考えている。
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