研究課題/領域番号 |
19K13591
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
河村 有介 神戸大学, 国際協力研究科, 助教 (00784125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アラブの春 / 社会保障改革 / 中東・北アフリカ / 権威主義体制 / エジプト / チュニジア / ヨルダン / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
本研究は、エジプト、チュニジア、ヨルダンという、中東・北アフリカ地域の3ヶ国を事例として、社会保障制度改革における政治指導者の選択が国民にどのような影響をもたらし、それが権威主義体制にどのような効果をもたらしたのか明らかにすることを目的としている。 3年目である今年度は、新たに事例3ヶ国における新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)流行下での社会保障の役割について分析を行なった。本研究の開始時点では、感染症の世界的流行やそれに伴う経済活動の制限による貧困や失業の深刻化について想定していなかった。さらに、現時点でも感染収束の見通しは立っておらず、社会保障の重要性が高まっている。今年度は、日本比較政治学会において、エジプトにおける新型コロナと生活保障の現状分析についての報告を行ない、そこでのコメントを基に、論文を修正し、学内紀要に投稿した。 さらに、近年のエジプトにおける社会政策に関する英語論文が海外学術誌に掲載された。1本は令和2年1月に施行された年金改革に関する論考である。本論文では、今回施行された年金改革法と、ムバーラク政権期に公布されながらも革命後に施行が見送られた年金改革法とを比較し、前回の年金改革が失敗した要因を分析した。もう1本は、公共部門における雇用に関する論考である。本論文では、ムバーラク政権期以来、財政赤字の原因と指摘されながらも抜本的な改革が進まなかった公共部門が、シーシー政権下での労働組合に対する締め付け強化や、新自由主義的経済改革の進行とともに、新規雇用を縮小し、公共部門労働者の年齢構成が徐々に高齢化していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の世界的拡大が収束せず、海外渡航が極めて困難となり、本年度に延期していたヨルダン及びチュニジアへの渡航、現地調査を再延期せざるを得なくなった。そのため、今年度も、日本国内で収集できる資料の分析にとどまり、一次資料の調査(文献調査)やアクター(政策担当者、社会活動家、研究者)に対するインタビュー調査に基づく詳細な事例分析を着手できていない。その一方で、本研究に関連する研究業績として、学会報告1本、学術論文3本(そのうち、2本が海外査読誌への投稿)ができたため、上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、今年度が最終年度であったが、海外への渡航が困難な状況の中、所定の目標が達成することができなかったため、翌年度まで補助事業期間を延長する。その上で、今年度に実施できなかった事例3ヶ国での現地調査を実施したいと考えている。現地への渡航が可能になった場合には、事例3ヶ国における社会保障政策に関係する一次資料の調査(文献調査)やアクター(政策担当者、社会活動家、研究者)に対するインタビュー調査を行ないたいと考えている。一方で、翌年度も現地調査が困難な場合には、日本国内で入手可能な資料を用いて事例分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に延期していた事例3ヶ国における現地調査のための費用(渡航費、滞在費)として確保していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、現地調査を再延期した。未使用額については、主として翌年度実施予定の現地調査に使用したいと考えている。
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